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  社会保険料の処理・仕訳のコツ (1) 
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1. 社保は『翌月徴収・翌月納付』が原則
2. 『翌月徴収』と『当月徴収』の長所&短所
3. 『翌月徴収・翌月納付』の仕訳について
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4. 社保は『当月徴収・翌月納付』でも可
5. 『当月徴収・翌月納付』の仕訳について


  1.社会保険料は、『翌月徴収・翌月納付』が原則です  

 厚生年金保険料や健康保険料といった「社会保険料」の経理上の取り扱いについて ご説明 します。皆さんご存知のとおり、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)は、会社 と 個人(役員&従業員) が折半して負担します(その他、少額ですが「児童手当拠出金」があります。全額会社負担です)

 ここで、役員・従業員の社会保険料をいつ天引きし&納付するのかということですが、原則的には『翌月徴収・翌月納付』となっています。具体的に言うと、「3月給与分の社会保険料」は、4月給与から天引きし、4月末に年金事務所に納付するということです。この徴収・納付方法は、健康保険法 及び 厚生年金保険法 に明文化されています。

 ただし、『当月徴収・翌月納付』で処理しても問題はありません。すなわち、「3月給与分の社会保険料」は、3月の給与から天引きし、4月末に納付するという形でも構いません。詳しくは、次ページの「3.当月徴収・翌月納付」で解説いたします。


  1.『翌月徴収』 と 『当月徴収』 のメリット&デメリット  

 翌月徴収の処理の流れをご説明する前に、『翌月徴収』と『当月徴収』のメリット&デメリットについて簡単にまとめてみました。それぞれ一長一短があります。ご参考になれば幸いです。


メリット
(長所)
社会保険料は「月の途中」で入社しても、満額徴収となる(日割り計算とはならない)が、給与の少ない初月は、社会保険料を徴収しなくて済むため、従業員給料の手取り額が大幅に減らなくて済む。
従業員数が増えてきた場合には事務処理が必然的に多くなるが、翌月徴収であれば、給与改定などの更なる事務処理の増加があっても、時間的に余裕があるため、処理を正確に行いやすい。
デメリット
(短所)
従業員からの徴収(従業員負担の社会保険料) と 会社の経費計上(法人負担の社会保険料)の月が1カ月ズレるため、経理面において やや混乱しやすい(うっかり・勘違いによる計算ミスが起きやすい)
1か月遅れで徴収するため、退職月には「2カ月分の社会保険料」を徴収することになる。
⇒従業員にとって、退職時の金銭負担が大きい。
⇒「翌月徴収」について従業員は知らない人が多いため、給与の支給金額が少ないことで揉めることも想定される。


メリット
(長所)
「給与支給」、「従業員負担の社会保険料徴収」、「法人負担の社会保険料計上」の月が全て一致しているため、すっきりしていて大変わかりやすい。
翌月徴収と異なり、退職月は、その月の1か月分の社会保険料の徴収で済むので、退職月の給与支給額のことで余分なトラブルが起きずに済む。
デメリット
(短所)
前述同様、社会保険料は「月の途中」で入社しても、満額徴収となる(日割り計算とはならない)。したがって、
⇒初月から社会保険料を徴収(あるいは勤務2カ月目に 2カ月分 の社会保険料をまとめて徴収)することになるため、給与の少ない 初月(又は 2ヵ月目)は、給料の手取り額が大幅に減り、新入社員の勤労意欲にも影響が出る可能性あり。
時間的に余裕がない中、従業員数が多いと事務処理が煩雑となり、ミスを誘発しやすい(「翌月徴収のメリット」の反対)


  2.『翌月徴収・翌月納付』の仕訳について  

 『翌月徴収・翌月納付』の処理・仕訳の流れについて、「3月給与に対応する(従業員負担分の)社会保険料」の事例を使って確認してみることにします(4月の給与から天引きするケース)。

 4月給与(20日締め・当月25日払い)につき、(従業員負担分の)社会保険料を「翌月徴収・翌月納付」で処理する場合、4月25日の仕訳は次のようになります(役員の場合も給料の勘定科目名が「役員報酬」になるだけで、仕訳処理は同じです。なお、下記仕訳では 「(20日締めにより発生する)21日から30日までの未払給与分の仕訳」 の記載を省略しています。あらかじめご了承ください)。


 4月25日の給料(給与)からは、「3月給与に基づき算定された(従業員負担分の)社会保険料」を天引きします。なお、天引きする社会保険料は、「預り金」勘定で貸方に書きます(負債に計上します)。従業員から預かったお金ですので、「預り金」勘定を用います。

 なお、他の預り金、すなわち源泉所得税の「預り金」、市県民税の「預り金」とは、一括して書かないで、各々別個に記載してください。なぜなら、同じ「預り金」勘定を使用していても中身が違いますし、また 後日お金を支払った際の仕訳処理の時に、金額(や摘要欄)を見れば一目で判別がつくからです。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
給 料 (4月給料) 300,000 普通預金 or 現金 262,000
  預り金 ※② 3,000
  預り金 ※② 5,000
  預り金 ※① 30,000
※①: 3月(前月)の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料を徴収します。
※②: 「源泉所得税」、「市県民税」、「労働保険料(当該仕訳に非掲載)」の天引き分 の3つについては、説明を割愛いたします。


 4月末には、「会社負担分の 4月 の社会保険料」を「法定福利費」の勘定科目を用いて借方に費用計上し、一方で負債が増加するので、貸方に未払費用(費用計上したものの未だ払っていないお金)を書きます。会社負担分の社会保険料は、「収益や費用の事実が発生した時点で計上するという原則(これを 発生主義 といいます)」に基づき、4月分は 同じ4月 に計上します
(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、この仕訳は不要です)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
法定福利費 ※③ 30,500 未払費用 30,500
※③: 4月(当月)の給料に対する 会社負担分 の社会保険料を費用計上します。
なお、従業員負担分との差額 +500円 は、児童手当拠出金です。

 (休日の場合は、翌営業日 / 銀行引き落とし日)
 また、同日付の上記仕訳とは別個に、3月給与に対する従業員負担分&会社負担分の社会保険料とを合算して納付しますので、その仕訳を記帳します。すなわち、4月25日に従業員から徴収した「3月給与に対する従業員負担分の社会保険料 30,000円」(「預り金」勘定で負債に計上していたもの)と、 (前出の仕訳には出てきていませんが)3月31日に費用計上した会社負担分の社会保険料 30,500円」(「未払費用」勘定で負債に計上していたもの)とを合算して、年金事務所に納付します。
(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、未払費用の箇所が「法定福利費」になります。)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※④ 30,000 普通預金 60,500
未払費用 ※⑤ 30,500
※④: 3月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(4月25日の天引き分)を納付します。
※⑤: 3月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(3月31日の費用計上分)を納付します。
 仕訳は、前出した「4月25日の預り金 30,000円」と、「3月31日の未払費用 30,500円」の2つの貸方勘定を反対側の借方(負債の減少)に書いて "過去の仕訳" を消去し、代わりに「普通預金60,500円」を貸方に書いて普通預金の金額を減らします(資産の減少)

【5月25日の仕訳は、4月25日と同じ処理のため、記載省略します】

 (休日の場合は、翌営業日 / 銀行引き落とし日)
 なお、補足ですが、「仕訳(2)」で出てきた4月30日に費用計上した「会社負担分 の社会保険料」(「未払費用」として、負債に残っているもの)は、5月25日に給与から天引きした「4月の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料」(「預り金」として負債に残っているもの)と合算して5月末に納付します。
(注: 「翌月末の社会保険料納付時に法定福利費を計上」する会計処理を選択されている場合は、未払費用の箇所が「法定福利費」になります。)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※⑥ 30,000 普通預金 60,500
未払費用 ※⑦ 30,500
※⑥: 4月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(5月25日の天引き分)を納付します。
※⑦: 4月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(4月30日の費用計上分)を納付します。