法人向けネット銀行(ネットバンキング)は、どれがお得?

会社設立 (法人の開業)

法人向けの「ネットバンキング」といえば、ネット銀行(インターネット専業銀行)が真っ先に頭に浮かびますが、その他にも都市銀行、地方銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など、様々な銀行が導入していますね。

そこで、本ページでは、どこの銀行がご自身の会社にとってお得なのか、手数料や提供サービス等の視点から比較・解説したいと思います。

ネット銀行は、使い方次第でメリットが増す

ネット銀行(インターネット専業銀行)は、法人口座であっても、基本的に 毎月の口座維持手数料(月額利用料)は「0円」となっています。ネット銀行(法人口座)のメリットは、以下の通りです。

  1. 毎月の利用料がタダである(0円)
  2. 振込金額が安い
  3. 低料金で一括送金が出来る
  4. 口座開設時にデビットカード(or デビット付きのキャッシュカード)を作成出来る
  5. (金利は高いが)ビジネスローンを組みやすい
  6. クラウド会計サービス(弥生会計、freee、マネーフォワード等)と連動できる(有人店舗型の銀行は、有料版のネットバンキングのサービスを申し込む必要あり)
  7. ネットバンキングを24時間利用可能
  8. 口座開設までの期間が有人店舗の銀行よりも早く、敷居も低い

有人店舗型の銀行よりも低価格(あるいは無料)でありながら、圧倒的に高機能かつ柔軟なサービスを提供しています。

一方、デメリットは、「入出金の手数料がかかる」あるいは「条件をクリアすれば、入出金手数料がタダになる」です。この点が、有人店舗を有する銀行と比較した場合の最大の欠点といえます。つまり、細かい金額を出し入れすると手数料をどんどん取られてしまいます。

ネット銀行(法人口座)の比較一覧表

住信SBI銀行 PayPay銀行 GMOあおぞら 楽天銀行
月額基本料 無料 無料 無料 無料
ATM利用料
(入出金)
110円 3万以上:0円
(165円~)
110円 220円~
振込:同行宛 0円 55円
(月1回無料)
0円 52円
振込:他行宛 145円 160円 145円 150円
3万以上:229円
デビットカード 作成可:
Mastercard
作成可:Visa 作成可:Visa, Mastercard 作成可:JCB
デビット還元 ポイント還元
(現金還元可)
なし 現金還元 現金還元
デビット年会費 無料 無料 無料 年1,100円
クレジットカード 作成可
標準装備の融資枠 あり (10万円)
自動融資 (デビット補填目的) あり
ビジネスローン
(事業性融資)
50~3,000万 最大1,000万 最大1,000万

補足: 上記3銀行の「クレジットカード」、「標準装備の融資枠」、(デビット残高不足に対応するための)「自動融資」は、”急な少額出費に対応するもの” という点で、目的が少し似ていますね。つまり、どのサービスも 「事業をより円滑にしてくれる」ものといえます。

住信SBI銀行は デビットカードのポイント還元あり

住信SBI銀行の法人口座は、デビットカードの利用に応じ、最大1%のポイント還元を受けられます。同銀行では、口座の入金手数料を毎回 110円 取られますが、入金したお金の大半をデビットカードの利用で消費すれば、ある程度の金額を相殺することが可能です。

ちなみに、ポイント還元は「ポイント還元の手続きを行なってキャッシュバックされる」(あるいは他のサービの供与を受ける)ものですので、キャッシュバックとさほど違いはありません。

また、住信SBIは、他行宛ての振込手数料が145円と、ネット銀行の中でも割安なのが特長です。住信SBIの口座への振込(同行本支店間の振込、同行宛ての振込)なら、手数料0円です。

加えて、住信SBI銀行(法人口座)では、クレジットカードの作成も出来ます。クレジットカードを持っていれば、急な出費の際にも「更に柔軟な支払い対応」が可能となります(デビットの残高不足にも対応可能)。

GMOあおぞら銀行は デビットカードのキャッシュバックあり

GMOあおぞら銀行の法人口座は、デビットカードの利用に応じ、最大1%のキャッシュバック(現金還元)を受けられます。カードは、Visa か Mastercard のどちらかを選択できます。

同銀行も 前出の住信SBI と同様に、口座の入金手数料を毎回 110円 取られますが、入金したお金の大半をデビットカードの利用で消費すれば、ある程度の金額を相殺することが可能です。

また、他行宛ての振込手数料が145円という点も、前述の住信SBIと同じで、ネット銀行の中でも割安です。GMOあおぞら銀行の口座への振込(同行本支店間の振込、同行宛ての振込)は、手数料0円です。

GMOあおぞら銀行は、ビジネスローンとは別個に「10万円の融資枠を法人口座に標準装備」しています。創業期の急な出費や、うっかり口座残高不足時の備えなどにも対応できる等、いざというときの “お守り” になりますね(実際に使わなくても、「10万円ある」というだけで安心です)。

 

PayPay銀行は「3万円以上」なら 入金手数料は0円

PayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)は、デビットカードの利用に応じたポイント還元やキャッシュバックがありませんが、3万円以上の入金であれば、口座入金手数料を取られません。入金の仕方次第ではお金を取られずに済みます。

振込にかかる手数料は、前出の2行より若干高めで、他行宛てが160円、同行本支店間(同行宛て)が55円(月1回は無料)となっています。それでも有人店舗型の銀行よりは安いので、お得感はあります。

楽天銀行の法人口座は 海外送金サービスに強みあり

デビットカードの利用額に応じ、最大1%のキャッシュバックがある点は他行(GMOあおぞら銀行や住信SBI銀行)と似ていますが、楽天銀行の場合は、デビットカードの年会費が 別途 1,100円 かかります(発行手数料は無料)。

ちなみに、同行のキャッシュカードは、発行手数料1,100円が別途かかります。前出の3行は、キャッシュカード、デビットカードともに(もしくは デビット機能付きキャッシュカードの)発行手数料・年会費ともに無料ですので、その点については多少の出費が伴います。

また、他行宛ての振込手数料が150円(3万円以上は229円)、同行本支店間の振込(同行宛ての振込)は52円と、綜合的にみて 前出3行よりも 高めの設定 になっています。

口座入出金の手数料(ATM利用)は、220円(又は275円)と、他のネット銀行と比べてかなり高めです。まとまった金額の入出金を想定している企業に向いているといえます。

ただし、上表には記載していませんが、海外送金手数料が他行よりも割安です(海外送金サービスに強み)。外国の取引先や自社の海外支店とお金のやり取りが活発な企業の場合、前述のデメリットを一気に吹き飛ばせるほどの 金銭的メリット が得られます。

デビットカードは 不正利用回避や散財抑制にも最適!

ネット銀行の数ある特徴のひとつともいえる「デビットカード」は、小口の経費支払いで現金の感覚で気軽に使え、しかも即時決済ですので、大変便利です。1枚くらい持っていても損はありません。

Amazon などのネットショッピングでの支払い、近隣店舗での消耗品や事務用品の購入、ネットの広告費の支払いなど、こまごまとしたものを支払うのに向いていますし、しかもその利用明細が1つに集約されますので、経理事務の効率化(見える化)にも役立ちます。

また、クレジットカード(後払い、信用借入のカード)と異なり、「不正アクセスによる多額の損害・リスクを回避できる」ことに加え、「あらかじめ 決まった金額を口座に預けておくことによって、(口座の上限を超えられないため)無駄な買い物をしなくて済む」などのメリットもあります。お金をキッチリ管理したい方にとっては最適のアイテムといえますね。

「有人店舗の銀行」の法人ネットバンキングは 一部を除き有料

有人店舗を有する銀行(都市銀行/メガバンク、地方銀行、信用金庫)で「法人向けのインターネットバンキング」を利用する場合、毎月 “口座維持手数料” が かかります。

ただし、メガバンクの三菱UFJ銀行や三井住友銀行、地方銀行の横浜銀行などの一部の銀行は、「残高照会・振込」などの基本的な取引について、無料で提供しています。

都銀のうち、三菱UFJと三井住友は「ライト版」なら無料!

金融庁が都市銀行と分類している銀行は、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行の4行になります。

これらの都市銀行のネットバンキングは、以前は一律有料だったのですが、三菱UFJ銀行 と 三井住友銀行 の2行は、ネットバンキングの「ライト版」(軽量バージョン)の名称で「契約料・月額利用料金ともに無料」のサービスを提供しています。

ちなみに、三菱UFJ銀行は「BizSTATION Light(操作時間 制限あり – 8:00~23:55)、三井住友銀行は「Web21 <ライト>(深夜・日曜の操作時間 制限あり)という名前です。ただし、あくまでも軽量バージョンですので、「残高照会」や「振込・振替」などの基本的なサービスのみとなっています。付加サービスが必要な場合は、有料版にグレードアップする必要があります。

一方、みずほ銀行 と りそな銀行 は、「有料」でネットバンキングのサービスを提供しています。無料バージョンはありません。

地方銀行・信用金庫について

最近は、横浜銀行の「〈はまぎん〉ビジネスコネクト」のように「残高照会・振込」のみであればネットバンキングの利用料を無料にしている銀行もチラホラあります。ただし、一部無料の銀行でも「一括伝送サービス」などの付加サービスについては、有料となっています。

基本的に、法人向けのネットバンキンを有料にしている地方銀行や信用金庫は多く、安くても「月額1,000円~2,000円+消費税」くらいの料金でサービスを提供しています。

「有料」のメリットを感じられる時まで、じっと待つ?

有人店舗のある銀行の「有料ネットバンキングの申し込み」は、本当にそれらの銀行のネットバンキングが必要となる時まで、あるいはその手数料の負担を感じないほどの収益力がつくまで 申し込みを控えてもいいんじゃないかと思います。

つまり、”融資や手形割引” など、それらの銀行との密接な取引も出てきて、(将来的に)御社にとっての「メイン銀行」的な立ち位置になった際には、(複雑になってくるであろう)銀行取引を円滑化するべく、たとえ有料であっても「ネットバンキングを導入する価値」が生まれてくるに違いありません。

それまでの間は、いわゆる従来型の「窓口やATMでの取引」(つまり通帳での取引)で対応していく程度で構わないと思います。

ゆうちょ銀行のネットバンキング

法人口座のネットバンキングは「無料」もある

ゆうちょ銀行(郵便局)のネットバンキングは、「ゆうちょダイレクト」、「ゆうちょBizダイレクト スタンダードプラン」、「同 エキスパートプラン」の3種類があります。

無料版の「ゆうちょダイレクト」なら、口座を維持するのにお金がかかりません(法人/個人口座ともに無料)。ゆうちょダイレクトは、個人版のものと同じ機能しかありませんが、口座のネット管理やネット振込ができるだけでも 十分に利用価値はあります。

サービス名 契約料 月額利用料
ゆうちょダイレクト 無料 無料
ゆうちょBizダイレクト スタンダードプラン 5,500円 500円
ゆうちょBizダイレクト エキスパートプラン 11,000円 1,100円

提出すべき公的書類が用意されていれば、さほど手こずることなく 口座を開設できます。ゆうちょの口座が必要な方は、他行の申し込みと一緒に申請しておくといいですね。

法人口座は国際ブランドのデビットカードを作成できない

ゆうちょ銀行の法人口座では、Visa や Mastercard などのデビットカードを作成できません。

「J-Debit」というデビット機能を付けることはできますが、これは Visa や Mastercard の加盟店と比べてあまり多くなく、またネット決済に対応している店舗数も限定的です。

労働保険料の口座引落しが不可(法人口座の場合)

ゆうちょ銀行の法人口座は、労働保険料の口座引き落としが出来ません(通帳取引・ネット取引の両方とも不可)。

従業員を雇用して労働保険料の支払いが必要な場合は、市中の銀行や信用金庫など、別の金融機関での口座引き落としが別個で必要となります(参考:労働保険料の取扱金融機関)。

ちなみに、労働保険料の口座引き落としができるのは、銀行(ネット銀行を除く)、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協、漁協、商工中金になります。