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  小規模企業共済制度について (1)
[本ページ]
1. 小規模企業共済とは?
2. どんなメリットがあるか?
3. 掛金払い込みによる節税効果は?
4. 任意解約の場合の注意点
5. 小規模企業共済の加入条件
[次ページ]
5. 共済金・解約手当金の区分
6. 共済金・解約手当金の受取額
7. 共済の「税法上の区分」について
8. 税法上の区分に基づく課税金額
9. 掛金の納付方法


  1.小規模企業共済とは?  

 小規模企業共済制度 とは、国が作った 『経営者の退職金制度』 です。個人事業をやめたとき、会社等の役員を退職したとき、個人事業の廃業等によって共同経営者を退任したときなどの生活資金等をあらかじめ積み立てておくための共済制度です。

 小規模企業共済法に基づき、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。国が全面的にサポートしている退職金制度ですので、税制面での優遇措置もあるなど、大変充実した内容となっています。

参考リンク: 中小機構 「小規模企業共済


  2.どんなメリットがあるか?  

 本来、小規模企業共済は 「役員や個人事業主の退職金・年金制度」 として作られたものです
ので、廃業、退職、65歳以上の受給(老齢給付)等の要件を満たして脱退し、受取金(共済金)を請求する場合には、様々なメリットがあります。

 まず第一に、「基本共済金(掛金合計額+α)」を受け取れます。脱退の仕方(請求事由)によって、受取金は「共済金A」 「共済金B」 「準共済金」 「解約手当金」の4つに区分されて支給されますが(次ページの「 5. 共済金・解約手当金の区分について」をご参照ください)、共済金Aに該当した場合が、一番多くお金を受け取れます(次ページの「 6. 共済金・解約手当金の受け取り額について」をご参照ください)

 また、一括受け取りを選択する場合、 「退職所得」 扱い(一時受け取り)となって一定の金額まで課税が免除されるほか、分割受け取りを選択の場合にも(給与所得ではなく)「公的年金等の雑所得」扱いとなり、(他の公的年金と合算して「公的年金等控除額」を差し引いた金額をもとに課税計算できるため)一定の節税効果を得られる などのメリットがあります(次ページの「 8. 税法上の区分に基づく課税金額」をご参照ください)

 更に、払い込んだ掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除の対象となります。掛金は月額1,000円から7万円の範囲(500円単位)で自由に設定でき、仮に最大の7万円の場合は、年間84万円の所得控除が受けられます(次項の「 3. 毎月の掛金払い込みによる節税効果はどれくらい?」をご参照ください)

 なお、払い込んだ掛金の範囲内で、中小企業基盤整備機構からお金を借りることもできます(事業資金・災害資金)。担保・保証人は不要です。急な資金不足のときなどにも役立ちます。

 つまり、「掛けて節税もらって節税殖やして得する借りて助かる」という4つのメリットを享受できます。

 ちなみに、小規模企業共済のホームページでは、「付加共済金」も受け取れるウンヌン・・・と書かれていますが、平成8年度に付加共済金を制度化して以降、資金運用がうまくいっていないため、今のところ支給実績はありません(つまり、受け取れないと考えておいた方が良いでしょう)


① 受取時に、基本共済金(掛金+α)をもらえる!
         (なお、付加共済金は、平成8年度の制度化以降、支給実績はありません)
-(1) 一括受け取りの場合、共済金は「退職所得」扱い ⇒ 一定額まで課税免除
-(2) 分割受け取りの場合、共済金は「公的年金等の雑所得」扱い ⇒ 節税効果
        (参考リンク: 国税庁 「退職所得控除額の計算方法公的年金等に係る雑所得の計算方法」)
③ 毎月払い込む掛金は、全額所得控除 ⇒ 節税効果が得られる
④ 払い込んだ掛金の範囲内でお金を借りることも可能 ⇒ 資金不足に対応


  3.毎月の掛金払い込みによる節税効果はどれくらい?  

 所得税控除により、実際にどれくらいの金額の節税となるのか、もう少し掘り下げてみましょう。例えば、額面の給料(年収)が400万円ちょっとであれば、課税所得金額(総所得金額から、給与所得控除額、基礎控除、扶養控除、社会保険料控除などを控除した後の額)200万円程度となりますが、その場合、所得税(国税)及び住民税(市県民税)を合わせて約30万円ちょっとの課税があります。これに対し、月額1万円の掛金をすることにより、更に12万円の控除を差し引けるようになるため、年間で 20,700円 の節税効果が得られます(下表)。


課税される
所得金額
加入前の税額 掛金月額ごとの加入後の節税額 (年間)
所得税 住民税 掛金月額
1万円
掛金月額
3万円
掛金月額
5万円
掛金月額
7万円
200万円 104,600円 205,000円 20,700円 56,900円 93,200円 129,400円
400万円 380,300円 405,000円 36,500円 109,500円 182,500円 241,300円
600万円 788,700円 605,000円 36,500円 109,500円 182,500円 255,600円
800万円 1,229,200円 805,000円 40,100円 120,500円 200,900円 281,200円
1,000万円 1,801,000円 1,005,000円 52,400円 157,300円 262,200円 367,000円
出典: 中小機構・小規模企業共済制度 (平成26年)

 また、課税所得金額400万円で、毎月の掛金が3万円なら、年間で 109,500円課税所得金額600万円で掛金5万円なら、年間で 182,500円もの節税効果が得られることになります。大変オトクですね!

 ただし、任意解約(自己都合による中途解約)などの場合、元本割れとなって返金されるほか、受取額は「一時所得」扱いとなり、全額課税対象となりますので、注意が必要です。

参考リンク: 中小機構  掛金全額 所得控除 とのことですが、どのくらいの節税になりますか


  3.任意解約の場合の注意点  

 任意解約の場合には、様々なデメリットが生じます。本来、小規模企業共済 は 「役員や個人事業主の退職金・年金制度」 として作られたものですので、「退職・廃業・65歳以上の受給」の理由以外で任意解約 した場合には、返金額等の条件が悪くなります(任意解約により受け取るお金を「解約手当金」といいます)。以下に具体的にみていきましょう。

 まず、加入期間が12 ヶ月未満の場合は、解約手当金を受け取れません。ただし、共済金A、共済金Bの請求事由で共済金を請求する場合は、6か月以上払い込んでいれば共済金を受け取れます。「お試し加入」をして、短期間で任意解約すると、1円も戻ってきません。ご注意ください。

 また、払込期間が20年未満で任意解約する場合、支給金額(解約手当金)は払い込んだ掛金よりも少ない金額で返還されます(元本割れとなります)。加入後 1年以上~7年未満 は、掛金元本の80%しか返還されません。払込期間 20年 でやっと掛金元本が100%返還されます(「 6. 共済金・解約手当金の受け取り額について」をご参照いただくと、共済金額との受け取り金額の差を確認できます)

 そして、任意解約の場合、受け取った 解約手当金 は 「一時所得」 扱いとなりますので、全額が課税対象となります。・・・ということは、せっかく毎年「所得税 非課税の優遇措置」を受けてきたのに、ここで一気に課税されてしまい、今までの得(非課税の特典)が全て水の泡になってしまいます(詳細は「 8. 税法上の区分に基づく課税金額」をご参照ください)


① 払込期間が12 ヶ月未満の場合は、解約手当金を受け取れない
② 任意解約の場合、払込期間が20年未満だと元本割れになる
③ 任意解約の解約手当金は、「一時所得」として扱われ、全額課税対象となる

 ちなみに、払込期間 40年 での任意解約で 元本の110%返還、60年後の任意解約で120%返還(上限が120%)となっています。ただし、起業するスタート時期が30歳だとすると、40年後→70歳、 60年後→90歳 になっていて、その頃には役員退任・老齢給付等により加入脱退されている(『解約手当金』ではなく、『 共済金A / 共済金B / 準共済金 』を受け取っている)人がほとんどですから、あまり現実的なお話ではありませんね。

 とにかく、「退職金」という目的で利用するのであれば、数多くのメリットはありますが、単なる「財テク目的」でこの共済に加入するのは、何の得もありません。

参考リンク: 中小機構  解約手当金の算定方法
共済金は何ヶ月以上掛けていれば受け取れますか。


  4.小規模企業共済の加入条件  

 小規模企業共済は、会社の社長・役員および個人事業主が対象です。また、事業の規模にも制限があり、製造業、建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農事組合法人などは、「常時使用する従業員数(正社員数)」が 20人以下 であることが条件となっています。商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)、士業法人の場合は、常時使用する従業員数が 5人以下 と規定されています。このため、事業所規模がやや大きい会社の役員等は、加入できません。

 「常時使用する従業員数」は、あくまでも共済加入時の人数要件であり、その後 従業員数が増えて要件に該当しなくなったとしても、そのまま継続して共済に加入できます。

 小規模企業共済は、個人の退職金制度ですので、「一個人に一契約」となっています。2つ以上の事業をおこなっていても(兼務役員であっても)、どちらか一方の立場でしか加入できません。

 加入できない人は、① (個人事業主の)配偶者等の事業専従者で、共同経営者の要件を満たしていない人、② 非営利法人の役員、兼業で事業を行っているサラリーマン(給与所得者)、③ 学業を本業とする全日制高校生、④ 実質的役員であるが商業登記簿謄本に記載されていない人、⑤ 生命保険外務員、⑥ 「中退共」(後述)等の加入者などです。

 なお、「従業員の退職金制度」として、勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度(中退共)」があります。掛金の一部を国が助成する退職金制度で、掛金は全額損金(必要経費)として計上でき、しかも全額非課税となります。従業員の福利厚生の一環として、活用されることをお勧めします。

参考リンク: 中小機構  小規模企業共済の加入資格
『常時使用する従業員』とはどのような意味ですか。
小規模企業共済制度と中小企業退職金共済制度(中退共)の違い