特例有限会社 ~合同会社と比較

会社設立 (法人の開業)

「特例有限会社」として存続可能

特例有限会社(とくれいゆうげんがいしゃ)とは、会社法施行(2006年、平成18年)よりも前に “有限会社” として設立された会社をいいます。

現行の「会社法」の下では、新たに “有限会社” (旧・有限会社)の設立はできなくなりましたが、既存の有限会社については、「特例有限会社」としてそのまま存続できます。株式会社への移行手続きをする必要もありません。

商号も、以前どおり「有限会社」を名乗り続けることになります(継続して有限会社の名称を用いなければいけない)

ただし、会社法上は あくまでも “株式会社” となります。つまり、「旧・有限会社の制度を一定限度で適用することが許されている 株式会社」という扱いになります。

この “特例有限会社” は、従前の有限会社特有のメリットである「決算公告の不要」、「取締役等、役員任期の制限無し(無期限)」などはそのまま継続適用されます。

自宅兼事務所などで経営しているような零細規模の有限会社にとって、「決算公告(台所事情の公開)」をしなくて済むのは、防犯上の意味からも大変助かりますね。

なお、特例有限会社は、冒頭記載のとおり 基本的に「株式会社」であることに違いないので、旧・有限会社で用いていた従前の呼称は「社員総会 ⇒ 株主総会」、「社員 ⇒ 株主」、「持分 ⇒ 株式」、「出資1口 ⇒ 1株」と読み換える必要があります。また、会社法施行後の書類は「株主総会議事録」「株式数…50株」のように記載する必要があります。

株式会社へ移行すると現行法適用

会社法施行後に、法務局にて 定款記載内容を変更登記すれば、「株式会社」への移行も可能です。

ただし、前述したような「特例有限会社」のメリットはその時点で消滅し、現行の会社法の規定が適用されることになります。このため、会社法施行後に「有限会社」から「株式会社」に変更する意味は、あまり無いといえます。

安易な「株式会社」移行はデメリット大

「有限会社から”株式会社”に名称を変更して信頼度は増す」などと書いているサイトを時々見かけますが、そんなことはありませんので、安易な名称変更はやめておきましょう。

株式会社への名称変更に伴い、変更登記費用がかかったり(登録免許税が6万円かかります)、「決算公告不要」や「役員改選不要」といった特例有限会社のみが享受できるメリットが消滅するだけです(決算公告の費用については、「株式会社の決算公告方法」を参照)。

“株式会社” は「最長10年までは役員の改選をしなくてもよい」と言いつつも、必ず10年後には改選決議をしないといけないので、その変更登記の費用がかかります。

役員改選を10年としておきながら、途中で強制的に解任した場合には、損害賠償の恐れもあります。つまり、費用増加とリスク増大の要因を抱えることになります。

また、現在の株式会社は、資本金1円からでも設立できるので、カネが無くても会社を設立できます。一方、「旧・有限会社(1円会社でない特例有限会社)」は、資本金300万円という出資条件のもとで “過去に” 設立された会社なので、「カネは持っている」、「会社の歴史もある」、という認識を持つこともできます。このため、「有限会社」の名称は、今後はそれなりに重みのある言葉へと変貌していくかもしれません。

特例有限会社と合同会社の比較

特例有限会社と合同会社は、(1) 「決算公告の義務がない」、(2) 「監査役、会計監査人を設置する必要がない」、(3) 「役員の任期がない」(特例有限会社…取締役・監査役、合同会社…社員)、(4)「間接有限責任である」 など、少人数での経営に適していて かつ 自由度が高い という点においては、合同会社に少し似ている面もあります。大まかなところを比較しますと、下表の通りになります。

【 特例有限会社と合同会社の相違点 】

内容・形態 特例有限会社 合同会社
会社類型 株式会社 持分会社
漢字略称 (有) (同)
カタカナ略称 (ユ)  ユ)  (ユ (ド)  ド)  (ド
出資者 1人以上でOK 1人以上でOK
出資者責任 間接有限責任 間接有限責任
決算公告
(決算の公表)
不要 不要
内部自治 法規規制
⇒法律上の決まりが多い
定款自治
⇒社内規定で自由に決められる
内部自治
(機関設計)
株主総会と取締役1名必要
(監視機関の設置が必要)
制約なし
(機関設計の規定なし。意思決定は業務執行社員の過半数で決める。「社員総会」を設置したい場合は、定款の “任意的記載事項” に追記すれば設置可。)
代表者の名称 代表取締役 代表社員
役員の任期 なし なし
株式の公開 公開できない 公開できない

「特例有限会社」と「合同会社」が全く似ているというわけではありませんが、これから零細規模の会社を起業する場合には、有限会社のメリットも併せ持つ「合同会社」の設立で対応していくことも、ひとつの選択肢になるかと思われます。

また、現在特例有限会社を運営していて、諸事情により組織変更が必要となった場合には、安易に株式会社を選択する前に「自分の会社にとって、株式会社と合同会社のどちらが好ましい形態か」を検討してみるのも良いかもしれませんね。

なお、最近の合同会社の設立状況については、「合同会社の長所&短所 > 4.合同会社は増加中!」のコーナーに記載しました。「株式会社の設立」ほどではありませんが、選択肢の一つとして徐々に認知度が高まっているようですね。