会社法の概要、旧法との比較について

会社設立 (法人の開業)

会社法について

会社法施行前(平成18年以前)においては、株式会社は「商法」に、有限会社は「有限会社法」の範疇にあり、同じ「法人」でありながら「別個の法律」となっていました。

しかし、平成18年5月の会社法施行によって同法へと事実上一本化され、同時に 会社法施行後において 有限会社の設立はできなくなりました。その代わり、有限会社の事実上の受け皿となる組織形態として「合同会社」が新設されました。

すなわち、会社法では「株式会社」「合同会社 (LLC)」「合名会社」「合資会社」の合計4種類の会社形態が認められています。会社法では、従前の法規制が大幅に緩和されており、柔軟な設立が可能となりました。

会社法(現行法)と 旧法 との比較 [株式会社の場合]

以下に、主な変更点や旧法との比較(「株式会社」にかかる現行法と旧法との比較)をまとめました。

(1) 最低資本金規制の撤廃
株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が不要となりました。最低資本金規制はなくなりました(1円でも設立可能)。

(2) 類似商号に関する規制の撤廃
従前は、会社設立時にチェックする必要のあった類似商号に関する規制が撤廃されます。これにより、同一市区町村内に類似商号や同一商号があっても、何も気にせずに「会社名」を付けることができるようになりました。

(3) 払込金保管証明が不要
従前は、株式会社の発起設立や有限会社設立の際に(資本金を会社に出資するに当たり)、「出資払込金をいったん銀行に預け、銀行で保管しました」という証明書を発行してもらうという作業が必要でした。

しかし、新会社法施行により、その保管証明の手続きをなくし、代わりに「残高証明書」を設立登記の添付資料として使用することができるようになりました。

以前は、この証明書を銀行に発行してもらうのに、有限会社設立でも15,000~30,000円の手数料を取られていましたが、施行後は残高証明書の発行手数料(数百円~千円弱程度)で済むようになりました。

また、証明書発行後は、その出資金(資本金)を すぐに事業資金として使用できるというメリットもあります(従前は、登記が完了するまでの間、銀行側が資本金を「別段預金」の名目で一時的に預かり、引出しができませんでした)。

なお、発起人が第三者とともに株式を引き受ける「募集設立」の場合は、従前通り「出資払込金保管証明書」の添付が必要となります。

(4) 会社の機関設計を自由に組み合わせることが出来る
「会社の機関」とは、取締役・取締役会、監査役・監査役会、会計参与・会計監査人、株主総会などを指し、これらの機関を組み合わせることを「機関設計」といいます。

定款に「すべての株式の譲渡について取締役会の承認を要する」と定めている「株式譲渡制限会社」(多くの中小企業が該当します)では、会社の個別事情に合わせた機関設計をすることができるようになりました(つまり、監査役会や取締役会を設置しなくてもよい)。

(5) 従前の株式会社と異なり、取締役は1人のみでOK
従前の株式会社で義務付けられていた取締役会の設置が任意になります。取締役会を置かない場合は、取締役の人数は最低1名でもOKです。ただし、取締役会を置く場合は、取締役 3名以上 が必要となりますので、ご注意ください。

(6) 4つの会社形態のいずれからも組織変更が可能となった
「株式会社」「合同会社 (LLC)」「合名会社」「合資会社」の4つの会社形態のいずれからも自由に組織変更ができるようになりました。

旧法では、「株式会社⇔有限会社」、「合名会社⇔合資会社」間での組織変更が認められていましたが(垣根を越える場合には一旦解散手続き等を経る必要があった)、現在はその垣根が撤廃されました。

なお、3種の持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)の会社形態の中での他の会社形態への変更は、各社員が負担する責任の限度を変更するという位置づけになります(呼び方も「組織変更」ではなく「種類変更」となります)。

(7) 役員(取締役、監査役等)の改選は10年まで延長可能
株式会社の役員の任期については、従前は取締役2年、監査役4年でしたが、定款で定めれば各々最長10年まで延長が可能となりました。

ただし、役員改選は義務であり、10年後には必ず改選しなければいけません(役員変更の登記費用は1万円)。また、役員の任期を10年間としておきながら任期途中で解任した場合には、損害賠償のリスクも発生しますので、慎重に役員を増やすようにしたいですね。