税務上は未払費用と未払金の区分なし
【 税務上は、どちらの科目でも問題ないが・・・、継続性が重要! 】
実は、税務上は、未払費用を使うはずの経費に「未払金」を使っても、特に問題にされません。なぜなら、前ページでご説明した「定義」は、あくまでも会計上の定義(企業会計原則注解)であって、税務上(税法上)の要件ではないからです。
それよりも、税務上においては、 「一旦、『未払費用』(あるいは『未払金』)の科目を使用したら、翌年度以降も継続して同じ科目を使用しなければならない」 ということが求められます。月によって未払金を立てたり、立てなかったりというのもアウトです。
つまり、「継続性」が重要なんです。昔、税務署(電話相談センター)に問い合わせた際も、この継続処理の重要性について説明を受けたことがあります。
昨年は「未払金」を使用したけれど、今年は「未払費用」を使おうかな?といった、コロコロ変わるような処理は、税務上、問題となってしまいます。
このため、例えば、「水道光熱費の未払計上分は、未払費用を使う」と決めたら、その後も継続して「未払費用」勘定を使用し続けることが大事です。
【 日常の経理処理のために会計基準の定義も覚えておきましょう! 】
とはいえ、普段から、会計上の基準で「未払費用」と「未払金」の区別をしておけば、何か新しい支払いが発生した際にも特に混乱することなく処理できるかと思いますので、この会計上の区分も頭に入れておくといいですね。
余談ですが、企業会計原則をはじめとする会計基準は、法律ではありませんが、慣習法として法体系の一部に組み込まれている「規範」(=ルール)になります。このため、日常の経理においては、会計基準を念頭に置いて処理することが求められます。
未払費用の仕訳例
未払計上できる経費の科目としては、会社負担分の社会保険料、固定資産税、従業員給与、水道光熱費、新聞代、事務所家賃、保険料、電話代、プロバイダ代などがあります。以下のような2パターンの仕訳の方法があります。
下の ① の仕訳(毎月末に未払計上するケース)は、毎月の期間損益を反映する処理方法ですので、こちらの仕訳処理を選択している会社も多いようです。期間損益をより正確に計算できますので、試算表を活用した「月次の収支分析」などに役立つ方法です。
②の仕訳(支払い時にのみ費用計上&期末に未払計上するケース)は、金額も少額、毎月の金額の変動も大きくない、なおかつ毎月未払計上するのが煩雑である場合に、こちらを採用しているようです。簿記3級の例題などに出てくる方法(現金主義的な仕訳方法)ですね。
【 ① 毎月末に未払計上するケース 】(期間損益を重視した仕訳処理)
8月分の電話代を、月末に費用計上した(便宜的に月末としました)。
(借 方) | (貸 方) | ||
通信費 | 2,000 | 未払費用 | 2,000 |
9月5日(銀行引き落とし日)に、普通預金から引き落とされた。
(借 方) | (貸 方) | ||
未払費用 | 2,000 | 普通預金 | 2,000 |
【 ② 支払い時に費用計上&期末に未払計上するケース 】(簡略化を重視した仕訳)
8月分の電話代が、9月5日(銀行引き落とし日)に普通預金から引き落とされた。
(借 方) | (貸 方) | ||
通信費 | 2,000 | 普通預金 | 2,000 |
3月の決算期末に3月分の電話代を未払計上した。
(借 方) | (貸 方) | ||
通信費 | 2,050 | 未払費用 | 2,050 |
翌期首(4月1日)に再振替仕訳(振り戻し処理)をした。
(借 方) | (貸 方) | ||
未払費用 | 2,050 | 通信費 | 2,050 |
「未払費用と未払金」の区分は様々
「未払費用」と「未払金」の区分の仕方は、前述した「企業会計原則注解」の解釈の仕方によって、(ネット上では)様々な見解が繰り広げられています。
例えば、請求書の有無で未払金と未払費用を区分するなど、・・・世間ではいろんな解釈の仕方が飛び交っていますね。また、支払期日の到来の有無により、未払費用と未払金を区別している会社もあるようです。
企業会計原則自体が 法律 ではなく、あくまでも「規範」であることから、このように様々な意見が飛び交う事態になっているのではないかと思われます。
当サイトでは、前ページ「会計上の『未払費用と未払金の違い』」のコーナーにおいて、一般的に広く認識されている解釈(「継続的 ⇒ 未払費用」、「非継続的 ⇒ 未払金」)をご紹介いたしました。
いずれにしても、一番優先されるべき事柄は、税務上で 「未払費用」&「未払金」 と認められるための要件、すなわち 「債務確定基準」 をクリアしているかどうかという点であり、これを満たさないと損金算入ができない、ということです。
そして、「未払費用」を使用している費用科目は、次年度以降も同じ処理をしなくてはいけない(処理方法をコロコロ変えてはいけない)ということですね。