本ページでは、「減価償却の特例や制度をうまく活用して、短期間で損金計上(費用計上)できる金額を増やす」方法を お話ししたいと思います。
後付け可能な付属品は後日に購入
不要不急の付属品は、後日購入で全額損金算入!
高額な資産(本体)を購入するとき、カタログにオプション(付属品)が掲載されていて、「ついでにアレも付け足しておこう」とか「コレも付け足して機能を充実させたい」といった欲求に駆られることがあるかと思います。
そんな時、あなたは「一緒にセットで買っちゃう派」ですか? それとも「今は不要だから、必要な時に(後で)買い足す派」ですか?
もし、そのオプション(付属品)が「今スグに必要ないもの」であり、かつ「(本体の)金額が30万円未満となっているもの」でしたら、一呼吸おいて(付属品を)後日に購入する、という方法を検討してみるのもアリかと思います。
「償却資産の損金算入の諸制度」(減価償却の制度)では、10万円未満の物品なら、「消耗品」などの勘定科目を使用して 全額損金に算入できるほか、30万円未満の設備や備品でも、購入した年度に少額減価償却資産として全額経費に計上できる特例制度(少額減価償却資産の特例)などがあります。
これらの制度をうまく活用すれば、「後付け物品」の部分は 購入年度の年に全額を損金算入することができます。
つまり、話をまとめますと、「高額な固定資産を取得する際に、後で取り付けがや買い足しが可能な物品(付属品)は 時期をずらして購入」することにより、「後付け物品(付属品)の全額を1年で経費化」できるということです。
この付属品部分は、何年にも分割して費用化しないで済みますので、業績が黒字の年などは、この方法で全額償却して(利益を圧縮して)税負担を軽減することが可能です。
なお「償却資産の損金算入の制度」の詳細については、「会計・経理処理 > 資産を経費にできる金額は?」に詳しく記載しましたので、よろしければこちらをご参照ください。
どんなシーンで生かせる? 注意事項は?
自動車取得の際の「カーナビやドライブレコーダーの取り付け」、「パソコンの本体とディスプレイの購入」 などの場面で、この方法を採用できることがあります。他にも、似たような場面がありましたら、一度検討してみるといいですね。
ただし、同様のケースであっても、状況によって適用出来ない場合がありますので、必ず事前に顧問税理士や税務署などに相談し、適用可否(問題の有無)の確認を取るようにしてください。
「税務上の減価償却の取り扱い」は厳格です。購入日、購入年度、資産・物品の内容の同異等、全てのケースに適用できるものではありません。後になって「損金否認のトラブル」に遭遇しないためにも、事前の確認作業をしつつ、採用してみるといいですね。
同日購入は一体の資産と認定される
「一体の資産」かどうかの判断基準は?
自動車(車両)を買う際に、「カーナビ」や「ドライブレコーダー」などのカー用品を一緒に取り付けて購入(同日 or 近い日付で購入⇒同日使用開始)した場合、カーナビ等も含んだ合計金額を6年で償却(6年に分けて損金計上)することになります。
これは、車両購入時にカーナビやドライブレコーダーが取り付けられて納車されれば、「本体と一体」の物品であるとみなされるため、全てひっくるめて6年間で減価償却しなくてはならない、という理屈です。
また、同日に購入したカーナビ等は、車両と切り離して単体で使用することができない点からも、車両と一体のものとして減価償却するべきと判断されます。
購入(取得)時期が一定期間 空いていることがカギ
しかし、本体部分を購入し、一定期間が経過したのちに「付属品などを購入」した場合は、別個の償却資産として扱われます。その金額が30万円未満なら「少額減価償却資産の特例」を使って全額損金に算入できますし、10万円未満なら「消耗品」などの科目を使って 普通に全額費用計上(損金算入)することができます。
補足:減価償却の開始日について
余談ですが、カーナビやドライブレコーダーの話の際に「同日購入」と書きましたが、減価償却を開始する日付は、「事業の用に供した日(使用開始日)」になりますので、ご注意ください。「取得日=使用開始日」を前提に記述致しました。
一般的に、工場に設置する機械設備などは、機械購入日、搬入日、設置日(取付日)、実際に使用を開始した日が異なりますので、その場合は、使用開始日(事業供用日)が減価償却費計算のスタートの日付になります。
一体購入は環境性能割・償却資産税も⤴
ついでに言えば、本体購入時にカー用品等を一緒に取り付け、一体の固定資産となると、「環境性能割」(自動車取得税廃止に伴い導入された、取得時に課される税金)も その分だけ課税されます。他の固定資産(家屋等を除く)のケースなら、「償却資産税」(市町村)の額が増えます。
環境性能割は、購入初年度のみの課税ですが、償却資産税は毎年課税され、結構な額の税負担にもなり得ますので、この点も含めて一体で購入するべきかどうかを判断するといいですね。
余談ですが、自動車取得税は 消費税が10%になる際(2019年10月)に廃止され、それに代わって「環境性能割」という税金が導入されました。自動車の取得時に課税されます(新車の場合: 環境性能割の税額=取得価額×環境性能割の税率。
環境性能割の税率は、燃費基準値達成度など 環境負荷軽減 度合いに応じて「非課税、1%、2%、3%」の4段階に区分されています(ただし 2020年9月までの導入1年間は、一定の軽減措置あり)。
“少額減価償却資産の特例” を活用
しかし、車両本体を購入後、しばらく時期が経過してから(例えば翌年度に)カーナビやドライブレコーダーを購入&取り付けた場合、それらを車両本体の減価償却に加えないで、カーナビ等の単体の物品として扱うことができます。そして、カーナビが30万円未満なら、全額損金に計上できます。
つまり、カーナビ等を後日(数か月後とか翌期など)に購入することにより、車両本体は固定資産として減価償却の対象となるものの、カーナビ(30万円未満)は少額資産として一括償却(全額損金計上)することができる、ということです。
購入時に一体のものとして取得する必要がなかったと判断できるため、このような取り扱いが可能となります(注意-再掲:実際の個々のケースが適用可能でない場合もありますので、必ず事前に顧問税理士や税務署などに問い合わせ、確認を取るようにしてください)。
また、「パソコン本体とディスプレイ(モニター)」の関係についても、同じことが言えます。同じタイミングで購入した場合で、合計金額が30万円以上となっていれば、一体の固定資産として減価償却を行う必要がありますが、本体とディスプレイの購入時期&事業供用日がずれていれば(例えば翌期など)、個々に損金計上・償却できます。
後で取り付けがや買い足しが可能なものについては、(少し期間を置いて)別の日に購入することにより、(30万円未満であれば)損金計上できる、ということを頭の片隅に入れておくといいかもしれませんね。
ただし、実際の購入場面では、「セット価格で大幅値引きしてくれる」ということもあり得ますので、「セット購入の方が得」か、「後付け購入で一括償却した方が経営戦略上は得」なのかを よく見極める必要がありますね。
無理に後付け購入するのは本末転倒
本ページでお伝えしたいのは、「即時に必要ではない付属品等の物品(30万円未満)なら、後日に購入すれば、その付属品を全額損金計上できます。ついでに、一定の節税効果が得られます。」ということです。
意図的にカーナビやドライブレコーダー、ディスプレイ、イスなどを別個に購入することを奨励しているわけではありませんので、ご理解ください。
もし、このようなシーン(付属品を別個に購入)にぴったり合致する「資産&物品購入」が将来的に発生する場合には、(顧問税理士や税務署などに事前相談・確認の上)うまく活用してみるといいですね。