法人の銀行口座を開設!
会社を設立したら、まずは『銀行口座』を作りましょう。社会保険料の納付、電話料金、水道光熱費の支払い(口座振替)など、様々な経費を支払うのに必要となってきます。
本ページでは、法人の銀行口座を「スムーズに開設するための手続き・コツ」についてご紹介したいと思います。
法人口座開設のメリット・重要性
「法人の銀行口座を作る目的は何か?」と問われたら、答えはズバリ「会社名(経営している自社の名前)で金銭の授受を行えること」にあります。
会社組織で動いている以上、「会社名の銀行口座」で経済活動を行うことによって、相手先も安心して取引してくれます。
設立後 間もない間は個人口座でも許される!?
実は、会社設立後であっても、「法人の代表者(社長個人)名義の銀行口座」で支払うことはできるんです。法的には問題ありません。
確かに、設立後間もない頃なら、取引先や税務署なども「(個人事業時代の口座を継続使用している)事情は理解できるよ。忙しかったんだもんね … 。」と同情の目を向けてくれるでしょう。しかし、このような猶予が認められるのは、開業後しばらくの期間 に限定されます。
個人口座を継続使用するデメリットとは
しかし、設立後 – 半年、1年、1年半 .. が経過して、未だに(いまだに)個人口座を使っていますと、そんな「情けの目」も消えてしまいます。
例えば、税務署なら「この会社、会社と個人のお金をちゃんと区分けできてるの?」「そもそもお金の管理が だらしないんじゃない?」という目で見られてしまいます。法人口座の開設後も 個人口座を継続使用している場合は、なおさら注意が必要です。
また、取引先によっては「法人と取引しているのに、なぜ個人の口座を指定してくるのか?」「売上除外(脱税)の手伝いをさせられるのはイヤだなぁ。」という疑念を抱く可能性もあります。もし そう思われてしまったら、会社の評判はガタ落ち になってしまいます。
取引先との付き合いは、「”儲け” の源泉」ですから、良からぬ印象を与えてしまったら、何一つ 得なことはありません。
イメージの問題(間接的ダメージ)だけではなく、「大口取引はできない」「融資は不可」といった実際のダメージも起こり得ます。大手取引先 や 銀行 からの信用も失いかねません。
法人口座を開設するメリットとは
一方で、会社の銀行口座で引き落としや 入金があったりすれば、「会社のお金が、会社の口座の中で動いている」ことは明白ですので、税務署も(税務調査などで)個人の資産まで「疑いの視線」を向けるようなことはしなくなります。
また、(商売の)取引先も「あれこれと余計な心配」をしないで気持ちよく取引をしてくれるなど、無用な混乱を避けることができます。
つまり、法人の銀行口座は、「お金の出し入れを管理する実用的な道具」であるとともに、「社会的信頼を得るための道具」でもあります。
法人の設立登記が完了したら、その帰りに近所の銀行(開設したい希望の銀行)へ立ち寄る、もしくは翌日に申し込みに行って、手早く作っておくといいですね。
法人口座開設に必要な書類・モノ
法人の銀行口座を開設するにあたり、必要となってくる書類等は以下のとおりです。銀行によっては以下のもの以外の提出を求めてくる場合があります。
【 提出書類 】
1. 会社の履歴事項全部証明書(いわゆる商業登記簿謄本。全部記載のもの)
2. 会社の印鑑証明書
3. 来店者本人の身分証明書(免許証など)
4. 取引担当者など、代表権を持たない人が来店の場合は 委任状
5. 来店者が代表者でない場合、代表者の身分証明書の写し(銀行による)
6. 許認可が必要な業者は、その許認可証の写しなど)
7. 会社の事業内容・運営実態がわかる資料(銀行による)
【 印鑑、その他の補足資料 】
9. 法人実印(印鑑証明書のもの)
10. 法人の銀行届出印(防犯対策のため、実印とは別のものを使われるのをおすすめします)
11. 代表者の実印
【 補足 】
「1.」の履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)は、法人登記の手続きのついでに、法務局の窓口で “必要枚数” を取得しておくと手間が省けます。あらかじめ何枚必要かを決めておく(法人口座を開設する数など)といいですね。なお、法務局の「かんたん証明書請求」でオンライン申し込みすれば、500円で取得することもできます(通常は600円)。
「2.」の印鑑証明書も、印鑑登録手続きのついでに “必要枚数” を請求しておくと時間の節約になります。あらかじめ何枚必要かを考えておくといいですね。印鑑証明のオンライン請求は、「初回の手続きがかなり面倒」ですので、法務局窓口で請求した方が圧倒的に簡単です。
「9.」「10.」の印鑑についてですが、法人実印(印鑑登録のもの)と法人銀行印は、セキュリティの面から別個のものにすることをおすすめします。別々にしておけば、不正出金などのリスクを低減できます。
審査が通らないこともあります
審査は以前よりも 厳格に …
最近は、皆さんご存知のように「オレオ〇詐〇」のような金融犯罪が多発していることもあって、全般的に『法人の口座開設のハードル』が上がっています。
特に、ネット銀行などは、有人店舗の銀行(都市銀行、地方銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など)のように「直接会って申し込みをする」ということが無いため、会社の経営実態把握に関してやや厳しめな印象があります。
どこの銀行も「審査の基準」を公開していないため、はっきりとしたことは言えませんが、以下のようなポイントで審査しているともいわれていますので、参考にしてみるのもいいですね。
審査NGの目安
【 審査NGとなる目安 】
- 登記上の住所などがバーチャルオフィス(レンタルオフィス)になっている
- 固定電話が無く、携帯電話のみである
- 資本金の額が極端に小さい(1円、50円、1,000円 など)
- 会社の実態を確認できるものがない
(住所・代表者・事業内容など 必要事項が書かれた会社ホームページ、会社パンフレット、取引に関する契約書や領収書、許認可証などのいずれか)
【 解説・補足 】
「 A. 」は、経営実態のない会社、ペーパーカンパニーと疑われる行為ともとられかねません。コストの問題など、理由があってレンタルオフィスにする場合もあるかもしれませんが、信用度はそれなりに低くなることを承知の上、銀行と話し合いをして口座開設の申し込みをするといいですね。
「 B. 」の固定電話が無いのは、「会社の連絡先が曖昧である」と理解されてしまいます。審査に通らない原因になりそうですね。
余談ですが、最近は「ひかり電話」など、インターネット・プロバイダーが運営する IP電話 がが安くていいですね。このIP電話は、あらかじめ電話加入権を持っていれば、プロバイダを乗り換えても電話番号を引き継げます。ただし、電話加入権を持っていない場合は、他社プロバイダーに乗り換える際に番号が変わってしまいます。ご注意ください(ただし、フレッツ光 ⇒ 光コラボ に変更する場合のみ番号を引き継げます)。
「 C. 」の資本金が少ないのは、「会社にお金が無い」あるいは「資金面において、計画性が無い」と理解されてしまいます。会社設立時に必要な資金は、「出資金」として会社経営者が提供するケースが一般的です。
資本金(出資金)が極端に少ないということは、「設立当初から『社長からの借入金』や『銀行からの借り入れ』などで会社を運営していく」ということにもつながりますので、銀行側が警戒心を抱くのは もっともだと思われます。
「 D. 」の “会社の実態を確認できる資料等がない” というのは、「会社の事業目的がはっきりしない」、あるいは「社会的に不適切な事業である(かもしれない)」「ペーパーカンパニーかも?」と誤解される可能性があります。
何をするかわからない会社との取引は敬遠したい、と考えるのも 至極当然ですので、事前に「銀行側にすんなり理解してもらえるよう、アタマの中を整理して準備しておく」「書類などを整えておく」ようにするといいですね。
目的に合わせて複数の口座を使い分ける
開設を希望する口座は、目的に合わせて「複数の銀行口座」を使い分けると便利です。
【 利用シーン1 】
一般的に、地方銀行や信用金庫よりも メガバンク(都市銀行)の方が 振込手数料 が安いので、(相手の便宜性を考慮して)指定振込口座でメガバンク等を使っている支払い先も結構あります。
三菱UFJ、三井住友、みずほ各行の場合、法人が「同一銀行・他店あて」で「キャッシュカードによる振り込み」の場合、3万円未満の手数料は 108円 で済みます。
【 利用シーン2 】
また、逆に自社の指定振込口座を決める場合も、メガバンク(都市銀行)の方が「大手銀行の信頼感・安心感」がありますので、相手先の不安感を取り除く一助となると思われます。
このため(利用シーン1、2の理由から)、もし 会社の比較的近い場所に都市銀行があるなら、1行くらいはメガバンク(都市銀行)にしておいても良いと思います。
【 利用シーン3 】
銀行引き落としの口座(毎月落とされる経費や社会保険料の納付などに利用する支払い口座)は、ご自身が(個人的にも)よく利用する「使い勝手の良い銀行」で、なおかつ「すぐに入出金できる銀行」にしておくと便利です。このような目的であれば、近所の地銀や信金の方がむしろ便利です。
一般的には、地銀や信金は、”地域金融機関” という立ち位置から、新設企業の口座開設に(都銀よりも)理解を示してくれることが多いようです。大手・中堅銀行が事務的で冷ややかな印象がある反面、信用金庫 は 優しい印象 のところが多いです。あくまでも印象の話です(笑)。
また、支払い口座など「利用の足跡」を付けておくと、将来的に融資の相談をしやすくなると思われます(取引ゼロよりはマシ という程度ですが)。
【 利用シーン4 】
ネットでの購入やオンラインの支払いの場合、”法人クレジットカード” での支払いでもよいのですが、インターネット専業銀行であれば、VISA、Mastercard、JCB などの「デビットカード機能付きのキャッシュカード」を(口座維持費無料で)発行してくれます。
ネットでの不正使用のリスクを抑える目的なら、インターネット専業銀行のデビットカードを持っておくのもいいですね。
ちなみに、メガバンクの みずほ銀行(2018年1月~)と 三菱UFJ銀行(2020年4月~)が法人向けのビジネスデビットカード の提供を開始しています。両行とも年会費は無料、ネットバンキングを契約していなくても「デビット専用ウェブページ」で利用額等の閲覧・印刷ができます。
口座開設時に同時申し込みが可能なほか、既に口座をお持ちの方も追加申し込みができます。ネット専業銀行のデビットカードと併用、あるいは比較・選択してみるのもいいですね。
【 作り過ぎに注意! 】
ただし、あまり沢山の口座を作っても、管理が面倒になりますし、また口座開設の際は商業登記簿謄本や印鑑証明書の発行手数料もかかりますので、ほどほどの口座数にとどめておきましょう。
口座開設までにかかる期間
一般的に、口座開設までに要する期間は、市中の銀行ですと約 1~2週間 程度、インターネット専業銀行だと2~3週間程度となります(ネット銀行は、書類の送付・受け取りなどの郵送手続きで日数を要します)。
口座開設後に、水道光熱費、社会保険料、電話・プロバイダーなど、口座引き落としが反映されるまで1か月程度かかります。これらに要する期間も逆算して考慮し、早目に銀行口座の開設手続きをしておくようにしましょう。
社会保険料の引き落としについて
社会保険料の 口座引き落とし は、 “一部のインターネット専業銀行” ではできません(ただし 取り扱い可能のネット銀行は徐々に増えつつあります)。
ネット銀行であっても、「ペイジー」でその都度支払うことは可能なようですが、いちいち入金手続きを行うのは面倒ですし、入力ミスのリスクもあります。そもそも、毎回そんなことをやるのは、やはり面倒ですね。
このため、社会保険料の支払いは市中の銀行(都市銀行、地方銀行、信用金庫など)で 口座引き落とし ができるようにしておくといいですね。
なお、ゆうちょ銀行も(社会保険料の)口座振替が可能です(参考:日本年金機構 リンク)。口座振替できないと書いているサイトがありますが、申し込み用紙が他の銀行と異なっているだけですので、何も問題なく、引き落としの申し込みが可能です。
ちなみに、ネット銀行の「イオン銀行」は社会保険料の引き落としが可能ですが、大都市に点在する「法人営業部の窓口」でしか口座開設の申込を行えないのがネックです(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5拠点のみ)。
労働保険料の引き落としについて
労働保険料の 口座座引き落とし は、”ゆうちょ銀行” や “インターネット専業銀行” ではできません(参考:労働保険料 口座振替 取り扱い金融機関)。
ペイジーでその都度支払うことは可能な場合もありますが、いちいち入金手続きを行うのは面倒ですね。こちらも “ネットバンキングうんぬん” とは切り離して、「市中の銀行」で口座引き落としの手続きをしておくことをおすすめします。