損益分岐点分析とは何か? 収支改善ツールとして活用する方法

事業戦略・実践ヒント

本ページ(2ページ目)では、「損益分岐点を使った改善策」「まとめ」を記載しました(1ページへ戻る)。

損益分岐点を改善する方法

損益分岐点を改善する(下げる)、つまり「損益分岐点分析を活用して 利益を出しやすくする」には、基本的に2つの方策を講じることにより 実現します。ひとつは「売上高を増やす」こと、もうひとつは「費用を減らす」ことです。

  • 売上高を増やす
  • 費用を減らす

言葉で書くと簡単なのですが、これを実際に行うには、なかなか大変ですね。特に、既存の事業を継続して売上高を増やすのは、並大抵の努力では実現しないこともよくあります。

こういう場合は、もちろん営業努力は続けるにしても、まずは費用を減らすと「損益分岐点を下げる」ことができます。

固定費を削減する

一番効果が出やすいのは、固定費の削減です。特に、売上と直結しない固定費を削減すれば、売上のダメージを極力減らすことができ、しかも損益分岐点を下げることが可能です。例えば、事務所の家賃、各種事務関連の賃借料、リース料、支払利息、減価償却費、その他の管理・事務費用などが挙げられます。

減価償却費について

減価償却費を減らすには、不要不急の償却資産を処分したり、過剰な設備投資を抑えるなどの工夫で対処できます。

なお、減価償却費は、「過去の設備投資にかかった金額を分割して費用化したもの」ですので、固定費に加算して計算することにより、正確な分析が行えます。「減価償却費は 現金の流出を伴わない(フリーキャッシュフロー)から 固定費に入れない」という考え方を主張する人もいますが、それはあくまでも資金繰り(お金の流れ)の問題です。購入時に 多額の「現金の流出」や「借入金の増加」などが起きていますので、加算すべきだと思います。

「資金繰りのための損益分岐点分析」(キャッシュフロー分岐点売上高)という “限定的な分析” でもない限り、固定費に入れて計算しましょう。

変動費を削減する

変動費というと、材料費、商品仕入、外注費、パート・アルバイト費用などがすぐに思い浮かびます。この辺は、製品(商品)の品質にも関わってくる重要部分ですので、やや手を付けにくい部分です。

下手にコストを下げて品質が落ちると、更なる売上減少や競争力低下を招きかねませんので、安易に「仕入コストを下げりゃいい」「人員を減らせばいい」という訳にもいきません。

なかなか難しいのですが、例えば「製造業」であれば、仕入先との価格再交渉をしたり、半製品で仕入れていたり、外注に出していたものを「自社加工」に切り替えたり、また売上が減った分、仕事に余裕のある人員にそれらの仕事を担当してもらったり … といった感じで「時間と労力」を使いながら、徐々にシフトしていくような工夫が必要になってきます。

既存部門の売上高を増やす

自社製品や取扱商品の売上が頭打ちになっている場合、(業界全体の景気が回復でもしない限り)売上を回復するのには かなりの困難を極めます。でも、そこをなんとか解決して、増収に転じていきたいものです。

売上は、基本的に「単価×販売量=売上高」で構成されています。売上を伸ばすには、製品単価(商品単価、サービス単価)を上げることと、販売量を増やすこと、これに尽きます。販売量の部分は、「販売点数×回転数」に分解することもできます。

  • 販売単価を上げる(製品単価、商品単価、サービス単価)
  • 販売量を増やす(販売点数×回転数

しかし、これらを改善するのは かなり難しいので、自社の業務内容に応じて綿密な対策が必要です。

単価については、不当に安い価格になっていないか、もしそうであれば 既存取引先と価格再交渉をしたり、他の販売ルートを模索して現状より単価を上げて販売する、などの工夫が必要です。

販売点数については、新規顧客開拓のための営業戦略や広告戦略などを実施していくことにより、増やすことができます。

回転数については、リビーター(また利用したいと思ってくれる取引先)を増やすことにより向上します。これは、製品(商品・サービス)自体の付加価値を増やしたり、購入頻度を高めるための何らかの工夫が必要となりそうですね。

新規分野への挑戦で売上を増やす

また、それと同時に(リスクの少ない範囲内で)新しい分野(製品・商品・サービス)へ進出してみるのも良いと思います。仮にうまく成功したら、抜本的な売上改善につながりますね。

… とても難しいのですが、既存の生産設備を使うなど、リスクを減らしながらチャレンジしてみるのであれば、OKだと思います。

まとめ

損益分岐点分析は 有益な収支分析手法

以上のように、損益分岐点(損益分岐点売上高)を使えば、様々な収支分析を行えます。

【 固変分解 】
費用を固定費と変動費に分けることによって、自社が支払っている経費がどんな性質のものかを改めて認識することができます。

【 限界利益、限界利益率の計算 】
また限界利益や限界利益率を算出することによって、自社が儲かりやすい体質なのか、儲かりにくい体質なのかを知ることもできます。

【 損益分岐点売上高の計算 】
そして、損益分岐点売上高を計算することによって、自社が真っ先に取り組める収支改善策(売上&費用)はどこなのかを、大枠で捉えることもできます。

【 原因分析・改善策の模索 】
大枠で捉えたら、また限界利益や限界利益率に立ち戻って分析したり、更には固定費や変動費の個別項目を詳しく調査して、減らせそうなものや代替策などがないかを吟味することもできます。

「木(固変分解)⇒森(損益分岐点分析)」を見たら、「森 ⇒ 木」を見直す、そして再び「木 ⇒ 森」を見る .. といった作業を繰り返し行なって 丁寧に分析していけば、きっと解決策は見つかります。

損益分岐点分析は 他にも一杯ある

損益分岐点分析(CVP)は、他にも「安全余裕率」(⇒ 安全余裕率の解説はこちら) 「目標利益達成売上高」など 沢山あります。管理会計上の分析手法として有益なものも多いので、また改めてご紹介していきたいと思います。