小規模企業共済制度 (2) ~ 節税効果、注意点、加入条件

年金・福祉・福利厚生

掛金払い込みによる節税効果は?

所得税控除により、実際にどれくらいの金額の節税となるのか、もう少し掘り下げてみましょう。

例えば、額面の給料(年収)が400万円ちょっとであれば、課税所得金額(総所得金額から、給与所得控除額、基礎控除、扶養控除、社会保険料控除などを控除した後の額)200万円程度となりますが、その場合、所得税(国税)及び住民税(市県民税)を合わせて約30万円ちょっとの課税があります。

これに対し、月額1万円の掛金をすることにより、更に12万円の控除を差し引けるようになるため、年間で 2.1万円(20,700円)の節税効果が得られます(下表)。

【 掛金の全額所得控除による節税額 】

所得金額 加入前の税額 年節税額
所得税 住民税 掛金月額
1万円
200万円 10.5万円 20.1万円 2.1万円
400万円 38万円 40.1万円 3.7万円
600万円 78.9万円 60.1万円 3.7万円
800万円 1,23万円 80.1万円 4万円
1000万 1,80万円 101万円 5.2万円

所得金額 年節税額
掛金月額
3万円
掛金月額
5万円
掛金月額
7万円
200万円 5.7万円 9.3万円 12.9万円
400万円 11万円 18.3万円 24.1万円
600万円 11万円 18.3万円 25.5万円
800万円 12.1万円 20.1万円 28.1万円
1000万 15.7万円 26.2万円 36.7万円

出典:中小機構・小規模企業共済制度(令和元年)

また、課税所得金額400万円で、毎月の掛金が3万円なら、年間で11万円( 109,500円)課税所得金額600万円で掛金5万円なら、年間で 18.3万円(182,500円)もの節税効果が得られることになります。大変オトクですね!

ただし、任意解約(自己都合による中途解約)などの場合、元本割れとなって返金されるほか、受取額は「一時所得」扱いとなり、全額課税対象となりますので、注意が必要です。

[ 参考リンク ]

任意解約の場合の注意点

任意解約の場合には、様々なデメリットが生じます。本来、小規模企業共済 は 「役員や個人事業主の退職金・年金制度」 として作られたものですので、「退職・廃業・65歳以上の受給」の理由以外で任意解約 した場合には、返金額等の条件が悪くなります(任意解約により受け取るお金を「解約手当金」といいます)。以下に具体的にみていきましょう。

まず、加入期間が12 ヶ月未満の場合は、解約手当金を受け取れません。ただし、共済金A、共済金Bの請求事由で共済金を請求する場合は、6か月以上払い込んでいれば共済金を受け取れます。「お試し加入」をして、短期間で任意解約すると、1円も戻ってきません。ご注意ください。

また、払込期間が20年未満で任意解約する場合、支給金額(解約手当金)は払い込んだ掛金よりも少ない金額で返還されます(元本割れとなります)。

加入後 1年以上~7年未満 は、掛金元本の80%しか返還されません。払込期間 20年 でやっと掛金元本が100%返還されます。

そして、任意解約の場合、受け取った 解約手当金 は 「一時所得」 扱いとなりますので、全額が課税対象となります。

・・・ということは、せっかく毎年「所得税 非課税の優遇措置」を受けてきたのに、ここで一気に課税されてしまい、今までの得(非課税の特典)が全て水の泡になってしまいます。

【 任意解約の場合の注意点 】

払込期間が12 ヶ月未満の場合は、解約手当金を受け取れない
任意解約の場合、払込期間が20年未満だと元本割れになる
任意解約の解約手当金は、「一時所得」として扱われ、全額課税対象となる

ちなみに、払込期間 40年 での任意解約で 元本の110%返還、60年後の任意解約で120%返還(上限が120%)となっています。

ただし、起業するスタート時期が30歳だとすると、40年後→70歳、 60年後→90歳 になっていて、その頃には役員退任・老齢給付等により加入脱退されている(『解約手当金』ではなく、『 共済金A / 共済金B / 準共済金 』を受け取っている)人がほとんどですから、あまり現実的なお話ではありませんね。

とにかく、「退職金」という目的(退職・廃業・65歳以上の受給)で利用するのであれば、数多くのメリットはありますが、単なる「財テク目的」でこの共済に加入するのは、何の得もありません。

小規模企業共済の加入条件

小規模企業共済は、会社の社長・役員および個人事業主が対象です。また、事業の規模にも制限があり、製造業、建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農事組合法人などは、「常時使用する従業員数(正社員数)」が 20人以下 であることが条件となっています。

商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)、士業法人の場合は、常時使用する従業員数が 5人以下 と規定されています。このため、事業所規模がやや大きい会社の役員等は、加入できません。

「常時使用する従業員数」は、あくまでも共済加入時の人数要件であり、その後 従業員数が増えて要件に該当しなくなったとしても、そのまま継続して共済に加入できます。

小規模企業共済は、個人の退職金制度ですので、「一個人に一契約」となっています。2つ以上の事業をおこなっていても(兼務役員であっても)、どちらか一方の立場でしか加入できません。

加入できない人は、① (個人事業主の)配偶者等の事業専従者で、共同経営者の要件を満たしていない人、② 非営利法人の役員、兼業で事業を行っているサラリーマン(給与所得者)、③ 学業を本業とする全日制高校生、④ 実質的役員であるが商業登記簿謄本に記載されていない人、⑤ 生命保険外務員、⑥ 「中退共」(後述)等の加入者などです。

なお、「従業員の退職金制度」として、勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度(中退共)」があります。掛金の一部を国が助成する退職金制度で、掛金は全額損金(必要経費)として計上でき、しかも全額非課税となります。従業員の福利厚生の一環として、活用されることをお勧めします。

[ 参考リンク ]