会計ソフトは不可欠 (3):タイプ別比較

事業戦略・実践ヒント

本ページでは、会計ソフト/システムの価格を見てみることにします。従来から販売されている「パッケージ型会計ソフト(インストール型会計ソフト)」と、インターネットに接続して利用する「クラウド型会計ソフト(システム)」に大別して解説します。

インストール型vsクラウド型の価格比較

会計ソフト/システムの価格を見てみることにします。従来から販売されている「パッケージ型会計ソフト(インストール型会計ソフト)」と、インターネットに接続して利用する「クラウド型会計ソフト(システム)」に大別して解説いたします。

インストール型(パッケージ型)会計ソフトの価格

インストール型(パッケージ型)会計ソフトで一番のシェアを誇る 「弥生会計」 の価格は、Amazonや楽天市場などで3~3.5万円程度で、 「会計王」 は2.5万円程度と比較的手頃な価格で出回っています。

ちなみに、私は同じ会計ソフト(弥生会計)を8年使い続けましたので(個人事業時代~法人化初期まで)、使用料は 1年あたり3,000円ちょっとの負担で済んだ計算になります。

また、消費税対応のために購入した弥生会計(第二弾)は、今年で5年目に突入していますので、1年あたりのコストに換算すると 6,000円~7,000円 程度となります。

インストール型の場合、ソフトのバージョンアップの内容が自社と関係ないものなら、わざわざ買い替える必要はありません。同じソフトを5年でも7年でも使い続けられます。

一方、「勘定奉行」、「PCA会計」 、「JDL IBEX会計」などは、様々な付加機能が付いているとは思いますが、高価格(8~15万円)となっています。結構な負担ですね。この金額を重荷に感じない程度の “高い収益力” が付いてきてから、乗り換えを検討する方が良さそうですね。

クラウド型会計ソフト/システムの価格

最近話題のクラウド型会計ソフト「freee」は、初期費用は無料ですが、月額費用は法人1,980円、個人980円(いずれも税抜)となっています。

法人なら、2年弱 で 弥生会計 や 会計王 の価格を超えてしまいます。また「MFクラウド会計」(旧マネーフォワード)は、個人は無料ですが、法人は月額1,800円です。

無料のソフト「フリーウェイ経理 Lite」などもありますが、 “広告付き” だそうです。有料版に移行すると月額3,000円もかかるとのことですので、安い話にはウラがありますね。

“クラウド型” の長所&短所

最近話題となっているクラウド型会計システムについて、私なりに少し解説してみます。クラウド型会計ソフト(システム) は、他人に「自社の経理データを丸ごと預ける方式」です。「インストール型(パッケージ型)」との比較を念頭に置きつつ、以下にメリット、デメリットを挙げてみました。


主なメリットは、以下のとおりです。

「ネットバンキング」や「クレジットカード」などの取引情報を自動取得できること(パッケージ型よりも情報の取り込みが容易)
(毎月の利用料を納めていれば)自動でバージョンアップしてくれること
万一のパソコンの故障や盗難等によるデータの被害を防ぐことができること
自社のパソコンにソフトをインストールしないため、インターネットが使用できる環境にあれば、いつでも会計データにアクセスできること
⇒ スマートフォンやタブレットで使用できるアプリ(スマホアプリ)も併用でき、簡単に入力可能

出先でササッと処理できる点も魅力ですね。

なお、人気の「MFクラウド」「freee」「やよいの青色申告/弥生会計」あたりでしたら、インポート機能 (他社からの乗り換え) と エクスポート機能 (他社への乗り換え) が付いていますので、機能面や価格面で満足度が下がった場合は、新しい会社への乗り換えも可能です。


クラウド型のデメリットは、主なものは以下のとおりです。①と③は「自社のデータを丸ごと預ける」ことが原因となっています。

セキュリティー面に対する不安感があること(後述)
将来的な利用年数を勘案すると、価格が意外と安くないこと(後述)
クラウドサーバー側(提供会社側)の不具合(エラー)が出た場合や、インターネット接続自体にトラブルが起きた場合などに、データの入力・印刷などがストップしてしまうこと(身動きが取れなくなる)


特に、セキュリティー面においては、(未利用者・非利用者から)根強い不安感を持たれているようです。私個人としても、かなり抵抗があります。

「セキュリティ万全」と公言しつつも、所詮人間のやることですから、完璧ということはないでしょうし、数年前に起きた「ベネッセの個人情報漏洩」のような「担当者による意図的な漏えい」だって、無いとは限りません。

また、データを預けっぱなしの状態で、その会計ソフト/システム会社の方が 自社よりも先に消滅することが無いとは限りません。つまり、「自分の目の届かないところ」で会社の経理情報がゴッソリと漏れる可能性は ゼロでない ということです。

ただし、クラウド型会計システムを提供するどこの会社も、セキュリティー面には最大限の注意を払っているようですので、もちろん簡単にデータが漏れるということはないと思います。

ご自身での「パスワードの管理」や「キャッシュのクリア(入力・閲覧データの削除)」をマメに行うことにより、リスクは大幅に低減すると思われます。


セキュリティー面はクリアできたとしましても、費用面での心配も浮かんできます。つまり、「毎年のクラウド会計ソフト利用料が払えなくなったら(払い辛くなったら)どうなるの?」という素朴な疑問も浮かんできます。生活が苦しくても、料金は優先して払いなさいということですよね。

あちらも商売ですから、役務の提供を受けたらお支払いするのが当たり前です。 個人的な話ですが、経営が大赤字だったころを思い浮かべますと、「払わなくても済む方式の存在がありながら(従来型のパッケージ版ソフトの場合、毎年バージョンアップをしなくても十分に利用可能、毎月支払い続けなくてはいけない」というのは、ちょっとキツイなあという気がしなくもないです。

パッケージ型のソフトの場合、現在販売されているもののほとんどが新消費税(10%)に対応していますので、消費税の変更に合わせてバージョンアップする(買い換える)必要は無さそうです(→同じソフトをバージョンアップせずに複数年使用可能)


最近は、従来タイプのパッケージ型会計ソフトの会社でも クラウド型の販売を開始(例: 2015年7月から クラウド型の「弥生会計オンライン」の販売を開始)するなど、外部にデータを保存する方式も かなり浸透してきています。時代の潮流かもしれませんね。

ちなみに、現時点(2019年)では、クラウド型会計システムの利用者の中では、「freee (シェア:約40%程度)」「弥生会計オンライン (約25%程度)」「MFクラウド (約15%程度) 」の3社が大半のシェアを占めています。

・・・といっても、クラウド会計利用者(企業)は 会計ソフト利用者の15%程度だそうです。ただし、クラウド会計ソフトのシェアは、緩やかではありますが、毎年徐々に伸びているようです。今後の動向が注目されます。

freee の特徴&留意点


クラウド型で一番のシェアを誇る「freee」は、「手間がかからない」、「カンタン」という点が魅力なのですが、基本的に「銀行口座に売上金が入金された時に売上を計上、銀行口座から仕入代金を支払った時点で仕入が計上されるという仕様になっています。

つまり、初期設定では「お金が入ったときを収入として扱い、お金が出ていった時を支出とする会計方式」である『現金主義会計』のようなスタイルになっています(現金主義を採用しているという意味ではありません。そのような印象を受ける、という意味ですのでご理解ください)

このため、「未決済」や「決済済み」という入力処理を加えることにより、正しい会計方式である『発生主義』の取引に軌道修正することができます。

例えば、他社ソフトの仕訳では 「 (借) 売掛金 / (貸) 売上高 」 とするところを、freee では「収入」の入力に「未決済」 を追記することによって当該仕訳を作り上げる、ということです。

ただし、これ自体は 何も難しい作業ではありませんので、処理をうっかり忘れないように心がけておくだけで十分かと思います。

[ 補足 ]
同ソフトは、現金主義会計を推奨しているわけではありません。同社サイト内でも「発生主義での記帳に対応している」旨(むね)を強調しています。ご理解のほど お願い申し上げます。


freeeの場合、「簿記知識が無い人への配慮」を追求した結果、独特な言い回しになっている箇所が散見されます。前述の 『売掛金』 計上の仕訳(取引)を 『未決済』 とする処理についても、簿記経験者からすると「独特な言い回し」に思えてしまう箇所です。

また、freeeで用いている「収入&支出」の表現も、一般的な期間損益の概念と多少ズレがあるような印象を受ける(勘違いを起こしやすい)面も否めません。まさに、「freee の専門用語や処理方法を覚える」といったイメージです。

このように、簿記知識が無い人にとっては「わかりやすい」言い回しに聞こえるフレーズが、簿記知識がある人からすると、違和感を感じることと思われますので、簿記経験者が導入される場合は「実際の仕訳をイメージ」しながら、操作に慣れていくようにしましょう。


「画一的・形式的な自動仕訳機能」は、実際の取引とピッタリ合致した仕訳をした場合には時間短縮&手間省略に繋がりますが、イレギュラーな取引があった場合は、その都度修正する必要がありますので、かえって面倒に感じることもあります。

また、この自動仕訳機能は「間違った仕訳」を自動実行するリスクもはらんでいることを十分に認識しておく必要があります。自動仕訳はラクな反面、”変化球” に気付きにくくなるというデメリットもありますので、簿記初心者が利用する場合は 特に注意が必要です。


「freeeを通じて 初めて簿記に触れる人」にとっては、「とっつきやすい、使いやすい」と感じるようです。ただし、将来他社ソフトへ移行する際は、操作方法の違いに”壁”を感じる可能性があります。

一方、「簿記&経理知識のある人」にとっては独特な言い回しや画一的な自動仕訳機能が邪魔をして「やや使いづらい」と感じることもあります。


freee は、「簿記知識をあまり必要としないでスタート」できてしまうため、「自動仕訳のミスにも気づきにくい」というリスクを抱えています。いつの間にか「期間損益がおかしくなった決算書」が出来上がってしまい、それを税務署に決算書を完成・提出してしまう可能性もゼロではありません。

仮に「税務調査で指摘されて初めてオカシイことに気が付いた」ということになると、修正申告に基づく税金の納付&過少申告加算税などのペナルティーが課されるという事態にもなりかねませんので、記帳初心者の場合は 少し注意が必要です。