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  決算対策で節税 - 社会保険料を未払計上する
1. 「会社負担分の社会保険料」について
2. 「会社負担分の社会保険料」を未払計上しよう!
3. 仕訳は 2通り の方法がある
4. 仕訳の流れ ① (毎月末に未払計上するケース)
5. 仕訳の流れ ② (支払い時に費用計上&期末に未払計上するケース)
6. 賞与にかかる社会保険料は、納付後でないと計上できません
7. 役員賞与にかかる社会保険料について
8. 労働保険料の取り扱いについて


  1.「会社負担分の社会保険料」について  

 前ページの「未払費用を拾い出して節税!」で、未払費用や未払金の定義や基準について説明致しました。具体例の第一弾として、本ページでは、「会社負担分の社会保険料」の未払計上の仕方について解説したいと思います。


  2.「会社負担分の社会保険料」を未払計上しよう!  


 社会保険料 (健康保険料&厚生年金保険料) の徴収・納付は、以下のような流れになっています。
(1) 従業員負担分の社会保険料を 給与から天引きして (会社が)預かり
(2) 会社負担分の社会保険料を費用計上して、
(3) (翌月に)(1) と (2) を合算し、年金事務所へ納付する

 (1) の「従業員負担分の社会保険料」については、当月徴収(当月に給料から天引き)しても、翌月徴収(翌月に天引き)しても、どちらであったとしても、結局は「預り金」(流動負債)として処理するため、会社の経費の増減には影響を及ぼしません(計上の時期等についてお知りになりたい場合は、「社会保険料の経理上の処理・仕訳のコツ (1)同 (2) をご参照ください)

 一方、(2) の「会社が折半する社会保険料」(法定福利費に計上)は、文字通り、「会社が負担する」わけですから、経費になります。この会社負担分の社会保険料は、「保険料の計算の対象となった月(給料が支払われた月)の末日に納付義務が確定する」ので、その時点で損金に算入することができます。つまり、費用が発生した当月に未払計上することができます。


 「会社負担分の社会保険料」を 当月に未払計上せずに、実際に支払ったときに損金算入(費用計上)している会社もありますが、仮にこの処理をしていたとしても、期末の決算整理仕訳で(未払計上をして)損金算入すれば問題ありません。しかし、この未払計上の整理仕訳をうっかり忘れたり、あるいは未払計上できること自体を知らずに、そのまま何もしないで決算を確定している場合は、節税効果が得られなくなってしまいます。 会社負担の社会保険料は、結構まとまった金額になりますので、これを忘れると、その金額分だけ利益が増えてしまう、つまり課税対象となる金額が増えてしまうことになり、損をしてしまいます。

 詳しい仕訳方法等は次項以降でご説明しますが、いずれにしてもこの「未払計上」の仕訳をすることにより、期末月の「会社負担の社会保険料」(法定福利費)を損金に算入できますので、確実な節税効果が得られます(毎期継続適用を行った場合、最初の事業年度のみ効果が得られます)。ここは 忘れず、漏らさず、ガッチリと実施したい ところですね。


  1.仕訳は 2通りの方法がある  

 社会保険料は、請求分が発生した月の「1か月後」に年金事務所に支払う(例: 3月分を4月末に支払う)ことになっています。このため、「会社負担分の社会保険料」については、以下のいずれかの方法で計上する(仕訳を行う)ことになります。

① 月末に当月分を 『法定福利費 / 未払費用』 として未払計上するケース
② 支払った時に 『法定福利費 / 預金』 として費用計上するケース

 ①のように、会社負担の社会保険料が発生した「当月末」に 法定福利費を計上(未払費用を計上)すれば、決算期末に未払費用の振替仕訳を忘れてしまうといったトラブルも防げます(毎月 未払計上しているので、期末月も前月同様に仕訳をすれば済むため)。また、余談ですが、当月に発生した費用を適正に月次損益(期間損益)に反映させることもできますので、毎月の試算表を「より正確な収支把握のツール」として活用できます。最近は、こちらの仕訳を選択される会社が多いようです。

 一方、②のケースの場合、翌月末の(実際の)社会保険料納付時に 法定福利費を計上することになります。このように、「費用・収益の見越し・繰延処理は決算時に行う」という処理を選択されている場合、実際の支払い時にのみ仕訳すればいいので、経理処理を簡略化したい会社などは、この方法を選択しているようです。

 ただし、②を選択する場合は、決算整理仕訳の際に「当月(期末)の会社負担分の社会保険料」を未払費用に計上するのを忘れないように気を付ける必要があります。この処理を忘れると、節税効果が得られなくなります。


  4.仕訳の流れ ① (毎月末に 未払計上するケース)  

 本項では、前述の 「 ①月末に当月分を 『法定福利費 / 未払費用』 として計上するケース 」の仕訳の流れについて確認することにいたします。


 まず、会社負担分の社会保険料を、当月末に借方へ「法定福利費」の科目で記載します。ただし、支払いは翌月なので、貸方に「未払費用」の科目を使用して未払計上します(従業員負担分の社会保険料の仕訳については、記載を省略しました)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
法定福利費 30,500 未払費用 30,500

 
 次に、前月に未払計上した法定福利費(会社負担の社会保険料)と、従業員からの預り金(従業員負担の社会保険料)とを合算し、翌月末に年金事務所へ納付します(休日の場合は、翌営業日などの銀行引き落とし日に納付)






  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※(a) 30,000 普通預金 60,500
未払費用 ※(b) 30,500
※(a): 前月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(前月or当月給料日の天引き分)を納付
※(b): 前月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(前月の費用計上分)を納付

 
 期中に(毎月)未払計上しているため、期末の決算振替仕訳は不要です
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
(仕訳なし)


  5.仕訳の流れ ② (支払い時に費用計上&期末に未払計上するケース)  

 「 ② 支払った時に 『法定福利費 / 預金』 として費用計上するケース 」の仕訳の流れについても確認することにいたします。


 「会社負担分の社会保険料」は、月末に計上しないため、当月分の仕訳は不要です(従業員負担分の社会保険料の仕訳については、記載を省略しました)。なお、前月の会社負担分の社会保険料の納付の仕訳(下の(2)の仕訳)は別途行う必要がありますので、ご注意ください。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
(仕訳なし)

 
 翌月末になったら、前月の給与支払い時に預かった「従業員負担の社会保険料(預り金)」と 「会社負担の社会保険料(法定福利費)」とを合算して、年金事務所へ納付します(休日の場合は、翌営業日などの銀行引き落とし日に納付)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
預り金 ※(a) 30,000 普通預金 60,500
法定福利費 ※(b) 30,500
※(a): 前月 の給料に対する 従業員負担分 の社会保険料(前月or当月給料日の天引き分)を納付
※(b): 前月 の給料に対する 会社負担分 の社会保険料(前月の費用計上分)を納付


 
 期末月の法定福利費を未払い計上していないため、振替仕訳をおこなって、費用計上します(これを忘れると、節税効果が得られませんので、ご注意ください)
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
法定福利費 30,500 未払費用 60,500

 
 翌期首になったら、前期末に振替仕訳をした未払費用勘定を(法定福利費勘定を用いて)振り戻します。
  ( 借 方 )   ( 貸 方 )
未払費用 30,500 法定福利費 60,500


  6.賞与にかかる社会保険料は、納付後でないと計上できません  

 前述のとおり、会社負担の社会保険(健康保険料、厚生年金保険料)は、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金に算入することができます。

 ただし、賞与に対応した社会保険料の扱いは、少し注意が必要です。すなわち、「賞与にかかる社会保険料についても、支払った月でないと確定しない」 という点です。社会保険料は、対象月の末日で支払義務が確定しますので、賞与にかかる社会保険料についても、給与対象分と同様に、賞与を支払った月の末日でないと未払計上(損金算入)できませんので、ご注意ください。

 賞与を6月と12月に支給するなら、6月末か12月末でないと未払計上できないということですね。3月決算だからといって、1・2・3月の賞与相当分の社会保険料を月按分で未払計上しないでね、ということです。


  7.役員賞与にかかる社会保険料について  

 役員への報酬は、「役員報酬の種類 (1) - 定期同額給与」等でもお話ししましたが、「定期同額給与」「事前確定届出給与」など、毎月決まった額の役員給与か、事前に税務署へ届け出た役員給与しか求められておらず、決算後の株主総会等で決定した「役員賞与」は損金に算入できません。

 確かに、役員賞与自体は損金として認められないのですが、役員員賞与にかかる社会保険料(会社負担分)は、法定福利費として損金に算入できます。えっ、そうなの?という感じがしなくもないですが、とにかく賞与本体とは異なる扱いとなります。

 「役員賞与にかかる社会保険料」のお話は、今までお話ししてきた「未払計上」の話題からは少しズレてしまいますが、予備知識として 頭の片隅にでも置いておくといいですね。



  8.労働保険料の取り扱いについて  

 なお、もう1つの社会保険である労働保険料(労災保険料、雇用保険料)については、保険年度の初め(4~5月)に昨年の実績に基づいて概算保険料額を算出し、6月1日~7月10日までにに申告(納付)することになっています(※)。そして、翌年度初めに過不足額を精算(確定保険料額を納付)します。

 法人税法上では、労働保険料については、概算保険料&確定保険料の納付時の損金算入が認められています法人税基本通達 9-3-3)。つまり、期間損益に対応した損金経理を要求していません。細かいことは要求しないので、(前払いで)納付した額をそのまま費用計上していいですよ、ということですね。仕訳処理等については、前払費用などの科目を使用するため、別途 機会を改めてご説明したいと思います。

(※) 概算保険料額は、原則的に40万円以上の場合、もしくは労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、納付を3回に分割することができます。