福利厚生費で節税 – 慶弔見舞金

節税対策&ヒント

災害見舞金品の取り扱い

2011年の東日本大震災の被災で、国税庁に「災害見舞金品」に関する問い合わせが数多くあり、同庁でもページを割いて基準・区分などについて解説しています。以下に、その内容をまとめてみました。

震災や火災等により、役員&従業員の家屋や家財が損壊した場合、社内規程で「一定の基準」を設けていることを条件に、災害見舞金品を支給することができます。災害見舞金品が福利厚生費として取り扱われるための「一定の基準」は、以下の通りです。

被災した全従業員に対して被災した程度に応じて支給される等、各被災者に対する支給が合理的な基準によっていること
支給する金額が、受給者の社会的地位等に照らし被災に対する見舞金として、社会通念上相当であること

①は、役職などにかかわらず、被災の度合いに応じて一定の金額を支給するというものです。例えば、家屋全壊で10万円、半壊で5万円など。

②は、「社会通念上相当」とありますので、いわゆる高すぎない金額、平均的な金額であることが求められます。

この「一定の基準」は、あらかじめ社内の慶弔規程等に定めていたものに加え、東日本大震災の災害をきっかけに新たに定めた規程でもこれに該当します。

[ 私の個人的見解 ]
東日本大震災が起きたとき、災害見舞金について規程で「被害の程度に応じて見舞金を支給」と記載しているだけで、具体的な金額を決めていなかった企業が多かったようです。

このような事態に至った場合、その時点で社内の委員会を設けて金額を決定し支給する、というのも一つの方策です。その金額が「社会通念上相当」であると認められる金額であれば、課税されないこととなっています。

[ 参考リンク ]

社外への慶弔見舞金は「交際費」で処理

社外の得意先に出す慶弔見舞金品の費用は、慰安、贈答のために要する費用に当たることから、「交際費」の科目で仕訳処理します(措通61の4(1)-15(3))。

福利厚生費は、原則として社員の福利厚生を図るための費用科目ですので、社外の人には使用できない科目です。

ちなみに、(交際費として)得意先にお金を出す場合、相手の社名、住所、氏名、役職、日付、金額など、自社との取引関係が明確に分かるように記録を残しておくようにしましょう。

なお、経営者と個人的な付き合いがある人で、業務上の取引関係がほとんど無い人に出す慶弔見舞金は、交際費にも該当せず、そもそも経費として認められません(損金否認)ので、ご注意ください。

余談ですが、災害による被害を受けた人々を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、「寄附金」や「交際費」に該当せず、「広告宣伝費」に準ずるものとして取り扱われます(法基通9-4-6の4)。その人々の中に得意先の従業員が数人いたとしても、同様の扱いとなります。

[ 参考リンク ]

「慶弔見舞金規程」の記載例

以下に 「慶弔見舞金規程」 のひな形(記載例)を掲載しました。

慶弔見舞金規程
第1条 (目 的)
本規程は、社員およびその家族に慶弔禍福のあったときの慶弔金および見舞金の支給について定めるものである。第2条 (支給事項の範囲)
慶弔金および見舞金を支給する場合は以下のとおりとする。
(1) 本人の結婚(結婚祝金)
(2) 本人、または配偶者の出産(出産祝金)
(3) 本人の業務上の事故等での死亡(弔慰金)
(4) 本人の業務外での死亡(弔慰金)
(5) 家族の死亡(弔慰金)
(6) 本人の住居が被災したとき(被災見舞金)
(7) その他必要と認められたとき第3条 (届出義務)
1.社員またはその関係者がこの規程により慶弔金または見舞金を受けようとするときは、担当の上司に届け出て、その事実を証明する書類を提出することを要する。
2.当該社員がやむを得ない事由により書類の提出等を行なえない場合は、その担当上司が当該従業員に代わって行なうものとする。
3.諸手続などに不備がある社員に関しては、規程による支給を行なわない場合がある。(→ 何らかの確認書類を会社で保管しておかないと、税務調査で否認される可能性があります。なお、香典などの場合は、「慶弔見舞金申請書」を上司が代理で作成して申請するなどの手段で対応する方がスムーズです。)第4条 (受給資格)
この規程の適用は、満6か月以上在籍する正社員に限るものとし、嘱託、パートタイマーおよびアルバイトには適用しない。(→ 他の記載例: 「この規程の適用は、満6か月以上在籍する正社員に限るものとし、契約社員及びパートタイマーその他臨時に雇用する者は、本規程に準じてその都度定める。」などの文言にすれば、解釈の柔軟性が増します。)第5条 (結婚祝金)
社員が結婚したときは以下の基準に基づき、結婚祝金を支給する。
(1) 勤続1年未満の者 10,000円
(2) 勤続1年以上の者 20,000円
(3) 勤続2年以上の者 30,000円(→ 追加の記載例: 「当事者がいずれも社員である場合は、双方に祝金を支給することする。」と追記しても構いません。)第6条 (出産祝金)
社員またはその配偶者が子を出産したときは、祝金を支給する。
(1) 第1子の場合 20,000円
(2) 第2子の場合 10,000円(→ 他の記載例:「社員またはその配偶者が子を出産したときは、祝金10,000円を支給する。」など)第7条  (業務上死亡弔慰金)
社員が業務上の事故により死亡した場合は、その遺族に対して弔慰金を支給する。
(1) 勤続1年未満 200,000円
(2) 勤続1年以上 300,000円
(3) 勤続5年以上 400,000円
(4) 勤続10年以上 500,000円第8条  (業務外死亡弔慰金)
社員が業務に直接起因しない理由によって死亡した場合は、その遺族に対して弔慰金を支給する。
(1) 勤続1年未満 100,000円
(2) 勤続1年以上 200,000円
(3) 勤続5年以上 300,000円
(4) 勤続10年以上 400,000円第9条 (家族の死亡)
社員の家族の死亡については、以下の各号の基準に基づき、弔慰金を支給する。
(1) 子、配偶者、父母の場合 30,000円
(2) 同居の祖父母、同居の兄弟姉妹の場合 10,000円(→ 他の記載例: 役職者、一般社員で区分しても構いません)
(1) 配偶者の場合
役職者 50,000円、一般社員 30,000円
(2) 子、父母、同居の義父母の死亡の場合
役職者 30,000円、一般社員 20,000円
(3) 同居の祖父母、同居の兄弟姉妹の死亡の場合
10,000円
他の記載例 終わり)第10条 (供花等)
社員及びその家族が死亡したときは、供花料等の支給につき、死亡原因の状況、職位、勤続、功績等を勘案し、その都度会社が審議して決める。第11条 (災害見舞金)
社員の住居が被災した場合は、その状況に応じて見舞金を支給する。(→ 会社周辺での地震による被災の場合、社員の大半が被災することになり、会社再建費用も必要とする中、予想以上に資金負担が重くなる場合があります。このため、条文では「その状況に応じて」とのみ記載しておき、実際の被災時の状況に応じ、その都度委員会など設置して金額を決定するのも一案です。)(→ 他の記載例: 火災なども想定し、次のように詳細に区分する方法もあります。持ち家か賃貸で更に細分化してもOKです。)
(1) 世帯主で扶養家族のある者
全焼、全壊、全流失 50,000円
半焼、半壊、半流失 30,000円
床上浸水等 10,000円
(2) 世帯主でない者及び独身者
全焼、全壊、全流失 20,000円
半焼、半壊、半流失 10,000円
床上浸水等 5,000円
他の記載例 終わり)第12条 (重複支給の禁止)
同一世帯または同一家族にて2名以上の社員が勤務している場合、原則として重複して支給しない。(→ 兄弟や親子で会社に勤務している場合に香典等を二重に支給しないための条文です。不要でしたら本12条を削除していただいて構いません。)第13条 (その他の慶弔見舞金)
本規程に定めのないものに関しても、会社が支給の必要のあると認めた場合には、審査して慶弔見舞金を支給することが可能である。付 則
この規程は 令和  年  月  日から施行する。

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