旅行積立金の取り扱いについて
旅行積立金を行う場合は、事前に労使協定を締結する必要あり!
慰安旅行のお金を会社で全額負担するケースもありますが、費用的にも多額になってしまうため、従業員にも費用負担をしてもらうべく、「旅行積立金」を(従業員の)給与から天引きしている会社も多いかと思います。
このように、従業員から旅行積立金を徴収する場合、事前に労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と「賃金控除に関する協定(賃金の一部を控除して支払うことができる旨を記載した労使協定)」を結んでおく必要があります。
つまり、経営者が勝手に規定を作って給料の一部を天引きすれば、労働基準法違反となりますので、ご注意ください。記載例は、「賃金控除に関する協定」「ひな形」などの語句で検索すれば、すぐに見つかりますので、参考にしてみてください。
労働基準法の第24条では、賃金控除について「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」と規定しています(これを「賃金支払5原則」といいます)。
給料から天引きする手順について
給料から天引きする手順は、次のとおりです。まず、給料から社会保険料・雇用保険料などを控除、次に所得税等を算出し控除、残った分が手取り額になります。そこから旅行積立金を天引きします。
【 仕訳(1): 給料天引き時 】
(借 方) | (貸 方) | ||
給 料 | 300,000 | 普通預金 or 現金 | 255,500 |
預り金 | 30,000 | ||
預り金 |
1,500 | ||
預り金 | 3,000 | ||
預り金 | 5,000 | ||
預り金 | 5,000 |
【 仕訳(2): 現金引き出し時 / 旅行代金支払い時 】
(借 方) | (貸 方) | ||
預り金 | 600,000 | 普通預金 | 1,100,000 |
福利厚生費 | 500,000 |
旅行代金を支払う際は、旅行積立金として従業員から預かった「預り金」と会社負担分の「福利厚生費」勘定を用いて仕訳するだけです(仮払消費税の記載は省略しています)。
【 仕訳(3): 余った積立金を従業員に返金する場合 】
(借 方) | (貸 方) | ||
預り金 | 100,000 | 普通預金、現金 など | 100,000 |
旅行積立金の返還を求められたら?
従業員から預かった旅行積立金は、社内預金として積み立てているものになりますから(預金者は、会社ではなく、従業員となります)、当日欠席した従業員から返還を求められた場合は、返還する必要があります。
ただし、会社側で「旅行積立金」ではなく、「親睦会費(旅行積立口)」等として徴収している場合には、社内で親睦会を開く際に使用するお金(会社・支店・工場全体で、社員間の親睦を図るために預かっているお金)として徴収している、という扱いにもなりますので、個別には返還しないケースもあります。
このあたりのケースは、労使間の協定にどのように記載しているかによって変わってきます。ただし、労使協定にどのように書かれていようと、旅行を欠席した人は、必ずと言っていいほど「旅行積立金を返してほしい」という考えが頭をよぎります。
労使間のトラブルを避けるのであれば、「旅行積立金」と「親睦会費」とをしっかりと区別して徴収することが求められます。
なお、預金者から旅行積立金の返還を求められたのに返還しない場合は、労働基準法違反となります。半額等、一部しか返還しない場合も同様です。
また、繰り返しになりますが、会社負担分(福利厚生費)からの「金銭支給」(現金、旅行券などでの支給)は、前述記載のとおり、認められていませんので、混同の無いようご注意ください。