本ページでは、個人事業主に課せられる「個人住民税」(市民税、市県民税)について採り上げました。住民税の税額の計算方法、所得税との比較、その他の留意点などについて詳しく解説しています(法人住民税については割愛します)。
(個人)住民税とは
住民税の目的・用途
(個人)住民税とは、「市区町村民税」と「都道府県民税」の総称です(合計したものをいいます)。市区町村 や 都道府県 の 行政サービス を行うために、負担能力のある個人(や法人)から徴収されているものです。お住まいの各市区町村が窓口となって、「市民税と県民税を合算」して徴収されます。
住民税は、特に決められていない「一般税」という扱いになっていて、教育、福祉、防災、ゴミ処理、警察、消防、公共施設の整備(インフラ整備)など、様々な用途・目的で使用されています。
名称はイロイロあります
ところで、市区町村から発行される納税通知書 や 市のホームページ には、「市県民税」や「個人市民税・県民税」と書かれていたり、「個人住民税」と表記されていたりします。また、市区町村が一括して徴収するので、”県民” の呼称を省略して、単に「市民税」「町民税」「個人市民税」などとも呼ばれています。
自治体によって、いろんな呼び方がされていますが、内容的にはどれも「個人住民税」であることに変わりありません。
申告書は提出不要、年4回の分納
住民税は、税務署で確定申告の書類を提出していれば、市町村への申告は不要です。税務署の提出した計算書類を元に 市区町村が 課税の計算 をしてくれますので、わざわざ市区町村に確定申告などを行う必要はありません(所得税の申告をしていない場合などの異例のケースを除く)。
毎年5月ごろに、お住まいの市区町村から 納税通知書 や 納付書 が送られてきます。個人事業主の場合は、6月に一括納付するか、年4回に分割して納付(分納)します。分納の場合の納付期限は、ほとんどの自治体が 6月、8月、10月、1月 となっています。
余談ですが、サラリーマンの場合は、勤務先の会社がとりまとめ、毎月の給料から天引きして市町村に(代理で)納付しています。これを「特別徴収」といいます。
一方、個人事業主のように、直接市町村から 納付書 をもらって納付するのを「普通徴収」といいます。記載されている住民税を窓口や口座振替で納付するだけですので、普通徴収だからといって特に面倒になるということはありません。
ちなみに、以前は「前納報奨金制度」といって、「全期分(1年分)をまとめて一括納付した場合などに一定額を割り引く制度」がありましたが、現在では ほとんどの自治体が廃止しています(お住まいの市町村に要確認)。
このような割引制度が無くなった今日において、「分割 or 一括」のどちらかを選ぶかについては、純粋に「事業の資金繰り」を考慮して決めるといいですね。
住民税は「均等割」と「所得割」がある
個人住民税は、「均等割」と「所得割」の2つの税金で構成されています。均等割は、税金を負担する能力のある人が “均等の額” を負担するもので、所得割は、その人が “所得金額に応じて” 負担するものです。本項では、個人住民税の均等割と所得割の計算方法についてお話しします。
均等割は、既述のとおり、税負担の能力のある人(免除にならない人)が、収入に関係なく一律に課税されるものです。この均等割の額は、各市区町村によって若干異なっていますが、おおむね 5,000 円 程度の均等割額(3,500+1,500=5,000円。年額)となっている自治体が多いようです。
- 市民税額(市区町村民税額) … 3,500円 程度
- 県民税額(都道府県民税額) … 1,500円 程度
以前は、市民税 3,000円、県民税 1,000円でしたが、平成26年から35年まで、東日本の復興財源(臨時特例法)として 各 500円 ずつが加算されることになり、市:3,500円、県:1,500円となっています。
また、自治体によっては、市や県の運営方針に合わせて創設した目的税を加算し、均等割の額が若干高くなっている場合があります(神戸市:3,500+500=3,900円 & 1,500円、富士宮市:3,500円 & 1,500+400=1,900円 など)。
所得割は、前年の所得金額に応じた税額の負担を求めるもので、一律10%(市民税6%、県民税4%)の比例税率となっています。
また、平成30年度の課税より、政令指定都市に住所がある場合は、市民税(市町村民税)8%、県民税(道府県民税)2% に変更されました(政令指定都市 … 6:4 ⇒ 8:2 に変更されました。政令指定都市以外の市町村に住んでいる場合は、従前どおり、市民税(市村民税)6%、県民税(道府県民税)4% となっています。
都市名 | 市区町村民税 | 都道府県民税 | 合計 |
札幌市 (北海道) |
8% | 2% | 10% |
山形市 (宮城県) |
6% | 4% | 10% |
東京都 特別区 |
6% | 4% | 10% |
名古屋市 (愛知県) |
7.7% | 2% | 9.2% |
大阪市 (大阪府) |
8% | 2% | 10% |
松江市 (島根県) |
6% | 4% | 10% |
福岡市 (福岡県) |
8% | 2% | 10% |
那覇市 (沖縄県) |
6% | 4& | 10% |
ちなみに、「名古屋市」は、”減税” を標榜する 河村たかし市長 の号令のもと、市民税率が若干低くなっています(8% ⇒ 7.7%)。仮に 減税額が 毎年 8,000円 くらいだとしたら、5年続けば 4万円 にもなります。銀行の “預金利息並み” にオトクですね。いつまで続くかわかりませんが、ちょっぴりうらやましいです 💰。
個人住民税の計算例
- 収入、支出、控除の条件 を洗い出す
年間収入 500万円、必要経費 50万円、所得控除額 73万円(基礎控除33万円、配偶者控除33万円、生命保険料などその他控除 7万円)の場合 - 課税所得金額を算出しておく
年間収入 500万-必要経費 50万-所得控除額 73万= 課税所得金額 3,770,000円 - 所得割の計算をする
市民税: 課税所得金額 3,770,000×6%= 226,200円
県民税: 課税所得金額 3,770,000×4%= 150,800円
(小計 377,000円) - 均等割の金額を確認
市民税 3,500円+県民税 1,500円= 5,000円 - 合算する
よって、所得割 377,000円+均等割 5,000円= 382,000円
所得税の計算と少し異なる
税務署に納める「所得税」と、地方自治体に納める「住民税(所得割)」とでは、所得控除額の金額 や 控除対象 が多少異なっています(例:基礎控除金額 … 所得税=38万円、住民税=33万円 など)。このため、課税所得金額が所得税とは多少異なる金額になってきますので、ご注意ください。
また、上記計算例(均等割)の「年間収入500万円、必要経費50万円(の差額)」は、個人事業主の「事業所得」を想定して記載しています。
ちなみに、サラリーマンの給与の場合は、年間の給与収入を基に「給与所得金額」という値を算出し(年間給与収入の60%~80%程度の額)、その所得金額から各種控除を差し引いたものが「課税所得金額」になります。その課税所得金額に10%(6%+4%など)の税率を乗じて計算されます。