自己資金(預貯金)を蓄える
実際に事業を開始してみて一番困るのが、やはり「資金不足」に直面することです。お金が足りなかったらどうしますか?親や兄弟姉妹から気軽に借りるわけにはいきませんし・・・。
銀行、制度融資、公庫などから借りますか?まさか、消費者金融なんてことは・・・(それはさすがにアウトですね)。開業当初から資金不足になるのは、絶対にマズイですね。
起業すると、店舗・事務所の賃貸契約にかかる資金、機械・器具・備品等の資金、その他の様々な 開業・設立資金 (設備資金など) が一気に必要となります。
… それだけでなく、最初の売上はほとんど期待できないので、仕入商品や材料費などの 変動費 相当分の資金に加え、「役員&従業員の給料」 「店舗や事務所の家賃」 「水道光熱費」 「通信費」といった、当面(最低でも向こう半年以上)の「毎月の固定費」に充てるための資金 (運転資金) も必要となります。事前に用意しておきましょう。
おおまかな金額を見積もったら、設立・開業時にそのお金を「資本金」として会社に出資しておけば、更に安心です(資本金が少なくて資金不足になれば、借入金で賄うことになります。必要資金は、あらかじめ資本金に組み入れるのもひとつの方法です)。
また、出資金以外にも、万が一に備え、サラリーマン時代の預金や退職金など、ある程度の預貯金を貯めこんだうえでスタートしましょう。
それと、一番大事なことは、「開業資金」や「当面の運転資金」は、銀行や公庫から借りずに「自己資金」でスタートすることが大事です。開業当初から、売上が順調に伸びることは まずありませんし、返済を据え置いて「1年後から返済する」ことにしたとしても、その1年後ですら返せないことだってよくあります。
ネットの「資金調達ネタ」は無責任なものも散見
インターネットで検索してみると、よく「融資を受けるテクニック」とか、「借りるための秘策」といった言葉が飛び交っています。一部の税理士や行政書士のホームページでも、融資を促すような文言(もんごん)を見かけます。
借金を返済するのは、その税理士でも行政書士でもありませんよね。お金は、借りたら 必ずご自身の力で返済しなければなりません。
開業時や開業間もないころに安易に融資を受けるのは、倒産リスクを高めるだけです。開業間もなくして、予定通り事が進まないことはザラにありますし、景気の悪化で売上が急減することだってあります。
そんなとき、事業主(個人事業主、会社、経営者)にある程度の預貯金があれば、「資金確保に奔走して商売どころじゃない」ということには絶対になりませんし、経営の軌道修正に全神経を集中することができます。
このため、独立・起業するなら、しっかりとお金を貯めてからスタートしましょう。そうすれば、「借金だらけの転落人生」を歩まないで済みます。
もう少しお金を貯めるには?
事業資金を更に増やすには、やはりサラリーマン生活をもうしばらく続けて、お金を貯めるのがベストです。なぁ~んだ、こんなことか、という方もいらっしゃるかと思います。でも、これが一番堅実な方法です。
また、貯蓄のために独立・起業の時期を延期して 時間の猶予が出来れば、事業計画を再考するチャンスも生まれます。それと同時に、余分な費用が掛かっていないか、資金計画を再度吟味することもできます。
考えれば考えるほど、より良いプランは生まれてきますし、時間の経過とともに お金も貯まります。仮に、考えに考え抜いて雲行きが怪しくなりそうだったら、引き続きお金を貯め続け、またいつか到来する「独立・起業」のチャンスを待てばいいだけです。
【 もう少しお金を貯める方法&節約のコツ 】
- 独立・起業を延期し、向こう1年間、サラリーマンの給料を貯蓄する
- なるべく資金を抑えるべく、削れる部分は極力削り、計画をスリム化する
先ほども触れましたように、資金不足のため、銀行や第三者から借金すれば、そのお金はいつか必ず返さなければいけませんし、その返済資金が個人事業&会社の資金繰りを後々圧迫してきます。
また、第三者からお金を出資してもらって 資本金に組み入れた場合、仮に会社が順調にいけば「株の価値」は上がるため、出資金の返還を求められた際に多額のお金を支払うことになります(建前上、出資金の返還義務はありませんが、会社側で株式の譲渡制限を設けていて、出資者が第三者に譲渡することを承認しない場合は、会社側が承認請求の対象となったその株式を買い取るか、買い取る者を指定しなければなりません)。
設立時に1株5万円で出資を受ければ、業績好調なら株の価値は15~20万円(3~4倍!)に上昇しても おかしくありません。
このため、安易に他人からの出資は受けない方が良さそうです。そもそも、他人からの出資は、後々のトラブルの原因になりますので、その意味でもなるべくやめる方がいいかもしれません。
会社の生存率は、10年で6%!
街中の風景をちょっと思い出してみてください。例えば、あなたのご近所にできた飲食店(例:ラーメン屋) や 雑貨店(例:アジアン雑貨店)を思い出してみましょう。
それらのお店は、5年、いや3年続いていましたか?「あの店、いつの間に潰れたの?」ということは、よくある話ですね。あまり言いたくないのですが、新規開店しても、大半のお店が倒産・廃業しているのが現実です。
会社の場合、設立後1年以内に過半数が倒産・廃業し、5年以内に80~85%が、更に10年以内に94~95%が消滅するといわれています。個人事業の場合も同様の傾向があります。
10年後は、たった5~6%の会社しか残っていないのです(個人事業もそれに準じます)。いかに事業運営が難しいのかがよくわかりますね。
生存率の低さの根本原因は …
ただ、これらの生存率の低さは、「事業プランの甘さ」も起因しているでしょうが、それ以上に「資金計画の甘さ」の方が大きく影響していると、個人的に思います。もっと具体的に言えば、外からの借金が多いと、アウトになる可能性が極めて高くなる、ということです。
第三者(銀行、信用金庫、公庫、自治体の制度融資など)からの資金調達は、据え置き期間(借り入れ当初の返済しなくてもよい期間)を経過したら、否応(いやおう)なく「毎月の返済義務」が生じます。
銀行も “ビジネス” で融資しているわけですし、公庫や自治体だって “大事な公的資金” ですから、期限内に返さなかったら シビアな態度に様変わりします。「カネが返せない = 倒産に直結」といった具合に、いとも簡単に倒産してしまいます。
この点が、「自己資金」と「外部からの資金調達」とが決定的に異なっている部分ですね。「●●屋を開業して、お客さんで賑わっているのに、借入額が多すぎて倒産」といったケースはよくあるパターンです。
事業で失敗すれば、自分だけでなく、自分の家族の未来も奪いかねません。安易な気持ちでやるくらいなら、安定したサラリーマン生活を続けた方が100倍幸せです。
「サラリーマン生活で夫婦共働き、休日に家族とお出かけ&近所の公園で子供とボール遊び」・・・ 十分すぎるほどの幸せです。「人並みの暮らし」ができることほど 幸せなことはありません。また、「病気になったら有給休暇を取って通院・休養する」・・・ こんなありがたい話はありません。
この「当たり前の幸せな生活」をやめて、独立・起業する価値があるのかどうかを、何度も何度も考え直してみてください。倒産して夜逃げになれば、サラリーマン時代の幸せな生活は「夢のまた夢」になってしまいます。
それでもやはり起業される決意が固いようでしたら、ゆっくり時間をかけて、クドすぎるほどの「入念な準備」をしましょう。成功する確証を持てるようになるまで、じっくりとプランを温めてみてください。そうすれば、事業の成功率は格段に高まります。